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  • 営業担当。チームのフロントに立ち、制作進行を管理。プロジェクト全体の指揮を執る。
  • プロモーションの立場からコンセプトを具現化。生の声を集め、届ける施策を展開する。
  • 同じくプロモーションを担当。『献血感謝LIVE』においては、台本作成も手がける。
  • マーケティング担当。プロジェクトの戦略策定から名称立案まで、企画全体を方向づける。
  • 媒体担当として、ラジオ番組『銀シャリのつなぐRADIO』を企画。番組制作に携わる。
吉本:少子高齢化が進む中、献血は大きな課題を抱えています。献血協力には実施可能年齢のリミットがあり、現在の献血を支えてくださっている層の年齢が上がっていくと、医療機関へ供給できる血液量が減少してしまう可能性があります。血液は人工的につくることができませんし、長期的に保存することもできません。そのため若年層を中心に、幅広い年齢層による継続的な献血協力が求められています。こうした背景の下で取り組んだのが「いのちをつなぐ声 献血推進PROJECT」です。

松田:事前の調査で分かったのは、多くの人が献血に興味を持っているのに、実際の行動には移せていないという事実でした。このギャップを埋めるには、どうしたらいいのか。命を救えるという献血の価値を実感し、自分の事として深く共感してもらう必要があると考えました。しかし「献血は大切です」というような表面的なメッセージを発信するだけでは、深い共感は得られません。そこで考えたのが「生の声を可視化する」というコンセプトでした。

千田:具体的にはイベントとラジオ、ムービーを通じて、献血協力者や輸血経験者、献血ルームの職員さんといった人々の声を届ける施策を行いました。しかし企画を進める中で気づいたのは、命を救われた人の体験談に比べ、命を救う側の人の声は見聞きする機会が少ないということです。そこで各献血会場に「献血ポスト」を設置。これまでもチームでは献血の案件に関わってきたのですが、改めて生の声を集めるところから企画にしました。実際に投函されたレターを読んでみると、自分が考えていた以上に心温まるものばかりで、私自身も心を打たれました。

山口:1年にわたって放送されたラジオ番組『銀シャリのつなぐRADIO』にも、想定以上に多くのメッセージが届きました。その声に目を通すと、誰かのためにという方の他に「自分も幸せな気持ちになれるから」という協力者さんも多いんです。「病気で亡くした子どもの分まで献血を続けたい」という方や、中には100回、200回と献血をされている方も! 嫌になるようなニュースや事件も多い世の中で、表に出る機会のなかった人々の優しさを知れたことは、私たち自身も人としてすごく勉強になりました。

竹原:献血イベントでは輸血経験者の笠井信輔アナウンサーをMCに、キュウソネコカミや超ときめき♡宣伝部、 ハラミちゃんといったアーティストが出演する「献血感謝LIVE」も開催しました。私も台本を書いたのですが、生の声を届けるに当たって特に心がけたのは、献血に対するハードルを下げること。出演者目当てで来場する方がほとんどなので、仰々しく正義感を煽ってしまうと他人事のように聞こえかねないと思ったんです。あえて一歩引いて伝えることで、もっと気軽に献血に協力できるよう意識しました。

松田:皆さんの話を聞いて、コンセプトをチームでしっかり共有できていたのを改めて実感しました。施策にブレが生じないよう、戦略には拠り所となる明確な言葉やストーリーを落とし込むよう努力したつもりです。特に「いのちをつなぐ声」というプロジェクト名は、クリエイティブのメンバーと相談をする中で、自分の出した案が採用されたんです。本来の領域を超えて、自分の考えた案が実際にロゴになって世に出ていくのを見られたのは、とても大きな経験になりました。

千田:特にオリコムは規模的にも社風的にも職種ごとの領域は関係ないところがあって、企画職だからといってずっと裏側で作業しているわけではないんです。自分も今回は営業と一緒に打ち合わせに同席し、クライアントとも積極的にやりとりしました。締め切りが必ずある仕事なので、そうすることで限られた時間の中で、チームとしてベストなものを作れると思ったからです。

吉本:営業としても非常に助けられました。クライアントの希望をうまく形にできたため、提案時からほとんど修正なく企画を実現できました。

山口:媒体担当もメディアの広告枠を売るだけではなく、社内とは別にラジオの制作スタッフとも一丸となって番組を形にしていきました。番組パーソナリティである銀シャリの鰻さんも自ら提案してくださって、初めての献血体験を実際に放送したんです。リスナーさんのみならず、定期的に献血に行くようになった番組スタッフさんもいて、放送を通じて献血に対する思いをみんなで共有できたのが、すごく嬉しかったですね。

竹原:実は私自身も何度か献血に挑戦したんですが、その日の体調などの制限で協力できず、心の中でそれがずっと引っかかっていたんです。だけど実際に協力ができなくとも、献血について伝えるだけでも別の誰かの協力を増やすことにつなげられる。そういう生の声も聞いて、自分の心も晴れた気がしました。イベント来場者の反応はもちろん、参加できなかった人もSNSを通じて献血について発信してくださっているのを見た時に、それだけでも企画としての意味があったんじゃないかと感じました。

千田:直接的に物を売るのとは異なる非営利的な案件だからこそ、人の心を動かす広告の醍醐味に触れられた気がします。広告会社として社会の課題にどう向き合えるのか。一つの企画としてだけじゃなく、自分の仕事の意義について改めて考えるきっかけになりました。

吉本:他にはない達成感がある反面、大きなプレッシャーも感じました。営業という立場上、どうしても企画を成立させることばかりにフォーカスしがちなんです。でも本当の目的は、一人でも多く献血協力者を増やすこと。人の命に直結する案件だから、必ず成果を上げなければなりません。常に本質を見失わないよう、責任感を持ってクライアント(広告主)とも議論を重ねました。それは就職活動にも通じることだと思います。どうしても就活中って、他の人のことが気になると思うんです。だけど最終的には他人の意見も受け止めた上で、自分が一番大切に思う部分を突き詰めることが重要なのかなと思います。

松田:実は自分の場合、就活中は「向いてないんじゃないか」という気持ちもあって、この業界を受けたのはかなり後だったんです。だけどこうしたプロジェクトを通じて、今は広告の仕事をすごく好きになっています。迷うこともあると思いますが、献血と同じで、少しでも惹かれる部分があれば気軽に行動してみてほしいなと思います。