

松田:事前の調査で分かったのは、多くの人が献血に興味を持っているのに、実際の行動には移せていないという事実でした。このギャップを埋めるには、どうしたらいいのか。命を救えるという献血の価値を実感し、自分の事として深く共感してもらう必要があると考えました。しかし「献血は大切です」というような表面的なメッセージを発信するだけでは、深い共感は得られません。そこで考えたのが「生の声を可視化する」というコンセプトでした。
千田:具体的にはイベントとラジオ、ムービーを通じて、献血協力者や輸血経験者、献血ルームの職員さんといった人々の声を届ける施策を行いました。しかし企画を進める中で気づいたのは、命を救われた人の体験談に比べ、命を救う側の人の声は見聞きする機会が少ないということです。そこで各献血会場に「献血ポスト」を設置。これまでもチームでは献血の案件に関わってきたのですが、改めて生の声を集めるところから企画にしました。実際に投函されたレターを読んでみると、自分が考えていた以上に心温まるものばかりで、私自身も心を打たれました。
竹原:献血イベントでは輸血経験者の笠井信輔アナウンサーをMCに、キュウソネコカミや超ときめき♡宣伝部、 ハラミちゃんといったアーティストが出演する「献血感謝LIVE」も開催しました。私も台本を書いたのですが、生の声を届けるに当たって特に心がけたのは、献血に対するハードルを下げること。出演者目当てで来場する方がほとんどなので、仰々しく正義感を煽ってしまうと他人事のように聞こえかねないと思ったんです。あえて一歩引いて伝えることで、もっと気軽に献血に協力できるよう意識しました。
山口:媒体担当もメディアの広告枠を売るだけではなく、社内とは別にラジオの制作スタッフとも一丸となって番組を形にしていきました。番組パーソナリティである銀シャリの鰻さんも自ら提案してくださって、初めての献血体験を実際に放送したんです。リスナーさんのみならず、定期的に献血に行くようになった番組スタッフさんもいて、放送を通じて献血に対する思いをみんなで共有できたのが、すごく嬉しかったですね。
吉本:他にはない達成感がある反面、大きなプレッシャーも感じました。営業という立場上、どうしても企画を成立させることばかりにフォーカスしがちなんです。でも本当の目的は、一人でも多く献血協力者を増やすこと。人の命に直結する案件だから、必ず成果を上げなければなりません。常に本質を見失わないよう、責任感を持ってクライアント(広告主)とも議論を重ねました。それは就職活動にも通じることだと思います。どうしても就活中って、他の人のことが気になると思うんです。だけど最終的には他人の意見も受け止めた上で、自分が一番大切に思う部分を突き詰めることが重要なのかなと思います。
松田:実は自分の場合、就活中は「向いてないんじゃないか」という気持ちもあって、この業界を受けたのはかなり後だったんです。だけどこうしたプロジェクトを通じて、今は広告の仕事をすごく好きになっています。迷うこともあると思いますが、献血と同じで、少しでも惹かれる部分があれば気軽に行動してみてほしいなと思います。