松浦:デジタルを用いたコミュニケーションが当たり前になった今、こうした格差の解消に取り組むことは、広告というコミュニケーション領域に携わる企業として大きな意義があると考えています。広告会社として何ができるのか、社会に役立つ新たな事業を模索しています。
豊田:立ち上げの発端となったのはメンバーが見かけた、ある携帯ショップでのスマホ教室の様子でした。高齢者の方々が参加されていたのですが、冬にもかかわらずお店の外の通路で講習会が開かれていたんです。多くの人が教えを必要としているのに、適切な環境が用意されていない。デジタルが幸せに結びついていない状況に、危機感を抱いたのがきっかけになっています。
吉本:情報格差は人々が自信を失う一因にもなっていると感じます。このチームの案件で、競輪チケットの購入アプリ利用促進のため、競輪場の来場者に向けてインストールのお手伝いをさせていただいたことがあります。50代から60代の男性が中心だったのですが、せっかく興味を示してくれても、いざ説明を始めると途中で諦めてしまう方がすごく多かったんです。申し訳なさそうに謝る人も多くて、格差の実態を痛切に感じました。
豊田:プロジェクトでは、オウンドメディアやSNSの運用にも取り組んでいます。デジタル庁をはじめとした関係各所への取材や調査を行い記事を作成、デジタルに関する「分からない」を「分かる」に変えるための情報発信を行なっています。
吉本:他にもスマホの操作方法をアニメーションで視覚的に伝えるLINEスタンプを販売するなど、コンテンツ制作も行なっています。心がけているのは、受け手の問題意識を高め、格差解消のためのヒントや気づきを与えられるようにすること。デジタル化に悩む当事者たちは、そもそもウェブ上の情報をチェックすることができません。格差をなくすには本人の努力以上に企業や自治体、周囲の人々の理解やサポートが重要なんです。
飯野:私はデジタルが当たり前の世代なので、不得意な人の気持ちが分からない部分もありました。プロジェクトを通じて、私自身も理解が深まってきたのを感じています。
鈴木:いつもと違う仲間と新しい事に挑戦できるのは、やっぱり新鮮です。実は業務が忙しくて参加できない時もあるのですが、するべきことも考え方もまったく違うので、いつも刺激をもらっています。
豊田:普通の広告の仕事とは別物になってきています。自分も普段はお客さんの条件を聞いて、目的や予算に合ったメディアプランを組むのが仕事。それは性にも合っているんですが、こちらでは0から1を作らなきゃいけない。自らが得意とする領域の外へ踏み出さないと、発展していかないと思うんです。
柴:何か一つ、プロジェクトならではの代表作と呼べるアプリやサービスを形にしたいですね。ただ、苦手意識のある人に訴求できる物となると本当に難しい。今はその大きな壁に挑んでいるところです。
松浦:時間はかかりますが、こうした自発的な活動が盛り上がれば、会社全体のプレゼンスも上がっていくし、思わぬビジネスチャンスが見えてくるはず。いわば自社に対する一種のブランディングとも言えます。これに触発されて、社内に新しいプロジェクトがどんどん立ち上がっていったら面白いなと思っています。
豊田:そのためにも、できることは何でもやってみようと思っています。自分が誘った仲間も多いので、みんながめげずに頑張れるよう身をもって示していきたいです。
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