Our Topics高いパブリシティ効果も獲得 街頭ビジョンの新しい活用事例

生中継の映像を背景と合成 通行人から注目集める

映画「ヒックとドラゴン」のプロモーションで、新宿の街頭ビジョンをうまく使っている場面を見た。JR新宿駅東口前の「ステーションスクエア」では、お笑いコンビ・オードリーの春日彰さんが、ドラゴンの衣装を着け、宙吊りになっている。それをテレビカメラで撮影し、向かいにあるアルタビジョンに写す。ビジョンでは富士山やスカイツリーなどの背景画像と合成し、あたかも春日さんが日本各地の上空を飛んでいるかのように見せ、新宿の街を行きかう人たちの注目を集めていた。
街頭ビジョンでは通常、テレビCMと同じ素材を一定回数放映することが多い。ライブ映像を中継したこともあるようだが、今回のような使い方は珍しい。スタジオアルタでは初めてだという。
人物をブルーバックの背景で撮影し、他の映像と合成する手法は、「クロマキー合成技術」と呼ばれ、映画やテレビではよく利用されているものだ。さらに今回は、種明かし的に一部始終を見せ、春日さんの汗だくな姿が笑いを誘っていた。
一方、渋谷では8月24日、パナソニックが「3Dビエラ」のプロモーションとして、街頭ビジョンの画期的な使い方を見せた。
これは渋谷駅前のハチ公前広場から見える街頭ビジョン4面に突然、滝川クリステルさんが現れ、実況レポートをするというもの。画面には「特別ニュース」「渋谷ハチ公前広場よりの映像」とテロップが入っており、滝川さん本人も「ただ今渋谷ハチ公前広場に来ています」と話している。しかし実際には、滝川さんはその場にいない。ただし彼女の周りで手を振る一般の人たちは、確かにその瞬間に渋谷駅前にいる人たちだ。自分たちの周りにいる人がビジョンに写っていることに気づいた多くの通行人は驚き、足を止めて見入っていた。
これは、ハチ公前広場の生の映像に、事前に収録した滝川さんの映像を重ねて放映したものだ。バーチャルリアリティ技術を使ったものだが、かなり精巧に作られていた。これは「あたかもそこにいるような立体感・奥行き感を味わえる」という3Dテレビの訴求ポイントとうまく重ね合わされている。

技術面・安全面で慎重な準備が必要

これら2つの事例に共通しているのは、テレビやインターネット上で使われている特殊映像技術を、街頭ビジョンに応用した点だ。これはそれほど容易なことではない。まずカメラの設置や、撮った映像のリアルタイム配信といった技術的課題がある。今回、新宿は高速光無線システム、渋谷はマイクロ波通信システムを使用して解決したようだ。
また屋外でのイベント的な扱いになるので、警察、消防、役所、地元商店会等からの許可が必要となる。生中継でビジョンに映すことから、映る人の肖像権も考えなくてはならない。新宿はイベントスペースでタレントを撮影しての展開なのであまり問題ないが、渋谷での展開は非常に難しかったに違いない。
しかし、このような多くの人々に驚きと楽しさを与えるライブコンテンツは、街頭ビジョンでしかできないだろう。高い注目を集めたことから、テレビをはじめ、スポーツ新聞、WEB上でも多く取り上げられ、バズ効果を発揮していた。デジタルサイネージの可能性を広げる展開事例と言えるだろう。

※このコラムは「宣伝会議」2010年10月号からの転載です。