Our Topics駅構内メディアにおける表現の最適化
5つの手法で通行人にインパクト
10月8日、フジテレビは、新ドラマ『結婚しない』の番組宣伝プロモーションの一環として、東京メトロ表参道駅で、「巨大デジタルフォトアルバム広告」を実施した。注目したのは、駅構内のOOHメディア展開で、効果的な手法が多く入っている点である。すなわち
①巨大展開 ②映像を流す ③音声を出す ④鏡を使う ⑤ピールオフ展開である。
まず第一に、高さ1.8メートルで、長さが20mを越すコンコースの壁一面に渡る巨大な媒体を使った。インパクトがあると同時に、通行者に一瞬ではなく、ある程度長い時間訴求できる。全体をフォトアルバム風のデザインとし、番組出演者の画像をうまく出していた。
次に、このボードにデジタルサイネージを臨時に設置する手法を取った。80インチ、55インチ、40インチ各2台がボードにはめ込まれ、菅野美穂さん、天海祐希さん、玉木宏さんのシーンイメージや、モチーフとして登場する花や花言葉などを映し出し、ドラマの世界観を忠実に表現した。さらに、同時に音声も出した。
交通機関のデジタルサイネージでは、音声を出せないところもあり、字幕でカバーするケースも多い。しかし、ここは音出しが可能な場所だ。「結婚してなくて、何が悪い!」と叫ぶようなシーンもあったが、やはりその場合、女優の肉声がふさわしい。通りかかった者が思わず振り返るほど効果的だった。鏡付きのポスターとしたのは、生涯未婚率が最高となった現在、仮にそこに5人の通行者が映った場合、1人が生涯独身の可能性があるということを意図したとのことだ。
本物のガーベラの花を「試飾」
驚いたのは、第一話で登場するガーベラの花を約五千本無料配布したことだ。丁寧に一本ずつ番組名が入った包装紙で包み、ボードに差した。いわゆるピールオフ広告の一種だ(剥がすわけではないのでテイクアウト広告か)その効果は絶大で、見る見るうちに通行者に持って行かれた。中には近所の大学生で、女子学生にプレゼントした者もいたようだ。花を供給した会社では、これを「試飾」と名付けている。試食と同じように、試しに花を飾ってもらうことを意図している。
このように、駅構内のOOHメディアで、従来の紙のポスターを貼る方法とは一線を画す手法がある。単に目立つからと言うのでなく、あくまで広告の意図に合わせて使うことが肝要だ。今回はその最適化がなされている好例と言えよう。参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2012年11月号からの転載です。