Our Topics直感的な興味喚起に有効 見る位置や時間により変化する表現

歩行者の移動にしたがって表現が変わる大型ポスター

JR新宿駅の北通路で、7月25日から掲出された高さ2.06m、左右7.28mの大型ポスターが人目を引いていた。
はじめ、進行方向左側面に見えていたシンガーソングライター・槇原敬之さんの名前は、歩くにしたがって徐々に消え、ポスター正面まで来るとハートのマークに変わる。さらに通り過ぎる際には、「Heart to Heart」という文字に変わり、ニューアルバムが7月27日に発売されることがわかる。
これは、「プリーツボード」と名付けられた特殊ポスターだ。1つのボードで、見る位置によって3つのビジュアルを見せることができる。近寄って見ると、縦にプリーツ(高さ3センチ程の折り目)が3センチ間隔でボード全面に貼り付けてある。離れて斜めの方向から見ると、このプリーツの片面だけが目に入り、正面からだと、プリーツとプリーツの間が目に入ることになる。この原理を計算して、精巧に作成されている。
メッセージのシンプルさも手伝って視認性も高く、その変化に気付いた通行者たちの注目を集めた。

表現の方法はさまざま ステッカー広告にも活用

見る位置によって表現に変化をつけるには、「レンチキュラー」を使う方法もある。一般的には印刷物を立体的に見せるために使われるが、見た目の変化を生む効果(チェンジング効果)を出すことも可能だ。

アサヒビールは、「すらっと」の電車内のステッカー広告で、今年2月にこの方法を活用。テレビCMでは、商品とグレープフルーツそれぞれを持っている2人の吉瀬美智子さんが重なるシーンがあったが、車内広告では吉瀬さんが手に持つ商品が、見る角度によってグレープフルーツに切り替わるようになっており、商品の特徴を上手く表現していた。

デジタルサイネージなら時間で表現を変えることも可能

静止しているものが動き出す瞬間、人は注意を向ける傾向があるが、このような展開は、デジタルサイネージならば容易に表現できる。
全日空は品川の自由通路のデジタルサイネージで、朝昼晩と異なる表現を映し出した。朝は「おはようございます」、夜は「お疲れさまです」と、広告メッセージを展開する前に呼びかけ、その場にいる人々の気持ちに入り込む戦略だったと言える。
見る位置や時間で表現を変える広告手法はキャッチーで話題性もあるため、上手く活用すれば高い効果を発揮する。導入を検討してみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2011年9月号からの転載です。