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ついに中づりをデジタルサイネージに置き換えた車両が登場

2017年2月13日、西武鉄道の車両基地で新型車両40000系の内覧会が行われた。「人にやさしい、みんなと共に進む電車」をコンセプトに開発された車両は、有料座席指定列車で運用され、沿線の人々により快適な通勤ライフをしてもらうことを意図したとのことだ。座席はクロスシートだけでなくロングシートにも転換できるように作られている。気になる広告設備は、スペースがあれば貼れるステッカーを除けば、まど上とドア横とデジタルサイネージだけになる。中づりの広告設定をなくしている点がポイントだ。JR山手線の新型車E235系が導入される時に、一時中づりが無くなるのではと報道され話題になったが(結果中づりは存続)この車両ではついに紙の中づりはすべてサイネージに置き換え無くなっている。17インチサイズのものが2面セットで、1編成全部で156面ある。しかも、ドア上部分にも同じサイズで160面と両方に搭載されているのだが、これはおそらく業界では初めてだろう。ドア上部分の1面は業務表示として使われるのだが、中づり部分は全て広告媒体とした。広告担当者によると、新たな広告媒体の創造(西武鉄道の媒体を選択していただく為の同業他社との差別化)、また利用がクロスシートの着席指定で進行方向向きに座る点にあわせてこの媒体を開発し、導入したとのことだ。着席指定時は長時間座っている者へリーチできるため、従来の車内デジタルサイネージとは異なったコミュニケーションが可能になるのではと考えている。3月25日から2編成導入を機に、4月から広告貸切電車として販売しているが、すでに4月は完売しており、紙媒体だけよりも稼動が良さそうな感触を得ている。

大阪環状線にも新型車両が登場!

中づり部分をサイネージ化している車両は、成田エクスプレスとJR西日本にもあるが、そのJR西日本も昨年12月24日から新型車両を導入している。大阪環状線に導入した323系は、従来とは違いドア上部分と貫通扉上をサイネージ化している。広告担当者にその理由を聞くと、ロングシートであることと、大阪環状線・JRゆめ咲線という利用者の多い区間を走行し、立っているお客様も多いので、様々な角度から見やすいドア上にビジョンを設置したとのことだ。従来の4:3から16:9にした17インチを1ヶ所2面で1編成あたり128面設置。1面左側が業務表示となっている。実際ドア近辺には乗客がよく滞留しており、またロングシートに座っても見やすく、広告関係者にも評判はよいとのことだ。現在行っていないニュース・天気予報や指数連動企画等のリアル情報放映も、実施を目指している。来年度までに21編成が導入される予定だ。大阪市交通局も昨年10月に御堂筋線に新型車両30000系を導入。これにもサイネージが設置されている。
このように、新型車両の導入時には利用者の視認環境を考え、場所は違うがデジタルサイネージが設置されるのがトレンドだ。ただ、導入ペースは決して速くない。3月10日に新型車両1000系への全車置き換えを終了した東京メトロ銀座線は、約5年かかっている。しかし導入率が上がるに従い広告需要も大きくなっていった経緯がある。車両数が増えれば広告料金も値上げされるが、サイネージの広告効果も上がってくる。新型車導入で増えるデジタルサイネージの広告媒体に注目してはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2017年5月号からの転載です。