Our Topics想定外の事態への対応を見据えOOHメディアのコンテンツを見直す

震災後に存在感を増したトレインチャンネル

東日本大震災発生後、OOHメディアでも広告の自粛やメディア自体の休止が続いた。OOHメディアは、その性格上、広告が中心で、他メディアにある番組や記事といった広告以外の側面が希薄だ。どちらかというと不動産的で、様々な公共空間を賃借して活用している意味合いが強い。そのためか、当初は多くの空きスペースや消灯された媒体が目についた。
しかし、JR山手線など4路線の車両内にある「トレインチャンネル」は異色で、存在感を出していた。比較的すぐに復旧し、見る機会が多かった点もあるが、ニュースや天気予報などの広告以外の情報コンテンツを放映している点が注目された。わずか60秒ほどだが、震災関連のニュースが時間によって更新されて流され、多くの人が見ていた。
広告の中でも注目したのが、グーグルの災害関連情報を集めた特設サイトのCMだ。非常事態にいち早く対応したという意味でも非常に秀逸で、震災後にふさわしい広告展開だと言える。その利用価値は十分伝わる。電車の中だったが、思わずスマートフォンでそのサイトを開いて見てしまった。全日空の福原愛さんの「東北で生まれて、東北で卓球を覚えた」もいい。さらに、広告ではないが、TBS系列の放送局が参加している「絆プロジェクト」の出演者も次々に電車内に登場し、メッセージを送った。
このようにトレインチャンネルは、従来のOOHメディアと異なり、コンテンツに番組的要素を持っている点が強い。一般的に、電車内のサイネージ自体、よく見られている。関東交通広告協議会の調査によると、電車内の広告ユニットの中では一番の視認率( 75.7%が見た・見たようだと回答)だという。音声は出ないが、テレビメディアと併用する広告主も多く、広告需要も元々高い。

しまじろうも、AKB48も被災者を応援

駅周辺でも、被災者を応援する広告展開が見られた。ベネッセコーポレーションは、「こどもちゃれんじ」の担当社員が自ら子供へ向けた応援メッセージを書き、大きな桜の木を描いたポスターを掲出した。
キングレコードは、ハチ公前にある大型ボードで、被災地の人々に向けたAKB48の応援メッセージを掲出した。文字だけだが、かえって印象的だ。企業広報やCSR活動など、コミュニケーションの目的は多様化している。OOHメディアでも、想定外の事態に素早く対応できるよう、広告コンテンツのあり方を考えておく必要があるのではないだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2011年5月号からの転載です。