Our Topics忙しい駅利用者に「見てもらえる」広告の必要性

228枚の書き初めが渋谷駅を埋め尽くす

今年で86回目を迎えた、新年の風物詩・箱根駅伝。毎年数々のドラマが生まれる日本3大駅伝のひとつである。毎年年末には首都圏でさまざまなプロモーションが行われている。09年末は箱根駅伝を中継する日本テレビの企画で、「ひと足早いよ大書き初め展」がJR山手線渋谷駅ホームにて開催された。
同企画は、書道家・武田双雲氏ほか大会関係者やタレント、日本テレビ・アナウンサーらが「箱根駅伝」への思いを毛筆で表現するというもの。計228枚の書が山手線外回りホームのポスター板を埋め尽くした。カタカナやローマ字で書かれたものなど、個性あふれる作品に、利用客も足を止めて見入っていた。題名通り、一足早く正月気分を味わった利用客の心には箱根駅伝への思いが少なからず残っただろう。
いつもは商品の告知であふれているポスター板。単に告知をするだけではなく、進んで見てもらえる工夫をすることで、一層の広告効果が上げられるはずだ。

人の動きに反応し「体感できる」広告

アサヒ飲料は1月12日から24日までの13日間、東京メトロ新宿駅に人の動きに反応するデジタルサイネージを掲出した。全長18mにわたるもので、この規模では日本初(オリコム調べ)の取り組み。
「ワンダ ドリップサイネージ」と名付けられた同サイネージは、同社の缶コーヒー「ワンダ 一番ドリップ 微糖」のプロモーションの一環として用いられたもの。100インチスクリーン4台、85インチスクリーン4台が掲出された。サイネージの前を人が通ったり、手をかざしたりするとセンサーが反応して画像が動き、音が聞こえるという「体感できる」広告となっている。さらに時間帯ごとに放映内容を変えられるため、朝・昼・夜それぞれに効果的な商品メッセージを伝えることができる。
狭い駅構内でも人の動きを感知できるよう、通常のポスター板に囲いを作って組み込んだプロジェクターとセンサーの位置関係が調節された。
1日数十万人が忙しなく利用する駅構内では、ともすれば広告は見過ごされがち。そんな中でも、ポスター画像が自分の動きに合わせて反応すれば、目を留める人も少なくない。
前述の箱根駅伝・書初め展のように「見てもらえる」広告を展開するには、人々の興味をひく内容を考える努力が、今後より一層必要になることだろう。

※このコラムは「宣伝会議」2010年2月号からの転載です。