Our Topics増え続けるデジタルサイネージ 求められる売り方の工夫

品川駅に国内最大規模のデジタルサイネージ

3月29日、JR品川駅の東西を結ぶ自由通路に65インチ44面のデジタルポスターが登場した。アーチ状の天井が続く、中央改札口から東口に連なる22本の柱に各2面ずつ、計44面という数は、現時点で国内最大規模のデジタルサイネージとなる。JR東日本は2008年から順次デジタルサイネージの設置を進め、東京駅や横浜駅・渋谷駅など首都圏の主要駅に既に170面ほど設置を完了している。その中でも今回の品川駅は、予想される視認率や数量を考えると高い効果が期待される優良媒体と言えるだろう。
ただデジタルポスターが増え続けるなか、販売に苦戦しつつある状況は否めない。デジタルサイネージの特徴はなんと言っても「動きがあること」だが、専用のコンテンツを作成するまでコストはかけられていないのが実情でもある。テレビCMのコンテンツを流用するのが一番容易ではあるが、視認者(通行者)が常に動いているデジタルポスターにおいては素材の捉えられ方は同じとは言い切れない。もうひとつの特徴である、時間帯による素材の切り替え・WiMAX(無線通信技術)を使ったリアルタイム配信を活かして「駅にあるデジタルポスターならでは」のコンテンツを作成することが課題となりそうだ。
昨今、OOHを取り扱う各社も売上の伸び悩みを懸念して、新媒体を販売したり、値下げを決行したりと拡販に試行錯誤している。情報があふれている今、生活者に正しく効率的に情報を届けたければ、「なにを使うか」だけではなく「どう使うか」という点を密接に絡ませていかなければ解決策は見えてこないはずだ。

ドラマの世界を駅に再現 取調室の出現にバズ発生

新年度を迎え、人で賑わう渋谷駅に突如取調室が出現した。これはフジテレビ系ドラマ『絶対零度~未解決事件特命捜査~』のプロモーションの一環。JR渋谷駅ハチ公口付近のコインロッカーが捜査資料を保管するダンボールの棚に見立てられ、床には捜査資料がばら撒かれたようなフロア広告が掲出された。さらに対面するポスターボードは、捜査室のホワイトボードのごとく事件の人物相関図などがデザインされたポスターが掲出された。「皆様からの情報提供をお待ちしております」という文言とともにポスター内に記された電話番号に電話をかけると、上戸彩さんが演じる対策室・桜木泉の応答メッセージが聞けるほか、音声に従い操作すると同ドラマのモバイルサイトのURLが送られる仕組みになっていた。
渋谷駅内に巧妙に再現された「取調室」は通行する利用客の目をひき、ばらまかれた資料一つひとつに目を向けたり、人物相関図が描かれたポスターを見ながら会話したりする様子も見られた。
日本でもトップクラスの乗降人員を誇る渋谷駅。待ち合わせ場所としても利用されるハチ公像の付近で展開することで、いわゆる「バズ効果」も期待できる特殊展開。アナログな既存媒体も使い方によって高い効果を生むことができることを感じさせる良例だ。

※このコラムは「宣伝会議」2010年5月号からの転載です。