Our Topicsメディア間の競争を勝ち抜くため、交通広告の媒体社が協業

エスビー食品「本生」シリーズ、全国の鉄道で中づり広告を実施

2017年9月18日から1週間、エスビー食品はチューブ入り香辛料「本生」シリーズのプロモーションで大規模な交通広告展開を行った。首都圏はじめ、関西、名古屋、福岡、札幌、仙台、広島など、時期は違うところもあるが沖縄を除く全都道府県に及ぶ。「本生」シリーズが30周年を迎えたのを機に、ブランドイメージ向上と購買喚起の2つの戦略で実施しているとのことだ。交通広告は売り場に近いところで訴求でき、購買喚起に有効と考え実施している。いわゆる「リーセンシー効果」を狙ったものだ。注目したのは、交通広告の中でも選んだ媒体が「中づり広告」だった点だ。デザインは「最香の贅沢」をキャッチコピーに、「S&B・本生」のロゴが中央に配置されている。ロゴのバックの金色の模様は、驚くことに金箔押しにエンボス加工をしている。商品のパッケージと同じであり、店頭で想起しやすくする効果があったに違いない。紙のパッケージと連動させるには、何より紙の媒体が有効だ。わさびがのったおいしそうな肉の写真に「肉に、きざみわさび。どうよ。」というメッセージでの訴求は、購入の動機付けにもなっただろう。その後スーパーなどの流通関係者から反響があり、評判は良かったとのことだ。

首都圏の民鉄11社局共同の中づりセット商品を活用

エスビー食品が中づり広告を行うのはここ数年を見てもない。実施に至ったのには、「首都圏11社局中づりドリームネットワークセット」と名付けられた商品の影響もあったようだ。これはJR東日本、東京メトロ、東急、小田急、京王、京急、東武、西武、京成、相鉄の電鉄各社と東京都交通局が交通媒体の価値向上を図ることを目的にプロジェクトを組み作り上げた共同商品だ。特に、新規広告主には特別の価格設定をして取り込んだ。それでも2000万円近くする高額商品だが、昨年の10月から1年間で実施が42件(32社)に達し、そのうち新規広告主は8割以上にもなったという。首都圏の鉄道利用者は一日平均1688万人にもなる(ジェイアール東日本企画調べ)。11社局の鉄道で大多数を占めるので、そのリーチ数はマス媒体並みだ。各広告主は効果を実感したに違いない。媒体社としても「生活者のメディア接触機会の変化やインターネット広告の隆盛によるメディア間競争の激化により交通媒体は非常に厳しい状況であるが、改めて媒体社が連携することによる交通媒体の価値向上を図ることができたことに対して、各社局ともに高く評価している」とのことだ。尚、同様の動きは関西の交通媒体にも広がっている。
このように、本来ライバル関係にある交通広告の媒体社が、業界一丸となってこのメディア間の競争を勝ち抜いていくことが必要だと協業の試みをし、それに多くの広告主が応えたという点は注目すべきことだろう。鉄道各社はICカードの全国相互利用や運輸面で相互乗り入れを行っているが、広告面でも相互運用が始まっていると言えるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2017年12月号からの転載です。