Our Topicsデジタルサイネージアワード2019が発表に受賞作から優れたサイネージ表現を考える

渋谷の巨大だまし絵ムービーがグランプリを受賞

2019年6月12日、デジタルサイネージコンソーシアムは、「デジタルサイネージアワード2019」を発表した。本アワードは、デジタルサイネージを使った表現の中から、優秀作品を選出し表彰することでサイネージ市場のさらなる活性化を目指すものだ。
グランプリは「WOW! NINJA in SHIBUYA」が獲得した。NTTドコモが運営する日本の観光情報サイト「WOW! JAPAN」のPRキャンペーンとして実施されたもので、渋谷のMODIの大型ビジョンで放映されたもの。外国人から広く認知されている忍者が、まるでビルの壁面をよじ登ったり、隠れたりする姿が見えた。サイネージ画面をビルの壁面と同じに見えるようにしたもので、だまし絵的映像だ。壁面がバタバタと開いたり、剥がれ落ちたりする音の演出もあり、臨場感があった。驚いたのは、センサーを使い、正面の横断歩道の信号が赤になったときに映像がスタートするようにしていた点だ。さらに、夜には自動車用の信号が赤が青になる瞬間に、あたかも忍者がその赤信号を取って赤い光の塊を手にしたかのようなシーンもあった。優秀なOOHクリエイターは「現場で考える」人が多いが、このことに気づき表現に結びつけた着眼点は優れたものと言えるだろう。
外国人観光客から拍手や歓声が巻き起こる盛り上がりを見せ、テレビやネットニュースで取り上げられるなど話題になった。台湾でもテレビ情報番組で話題になり、サイトのアクセス数も10倍に上昇したとのことだ。
準グランプリは「ジュラシック・ピラー」が受賞。映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のプロモーションで、サイネージの表現よって恐竜に襲われるスリルな体験ができる広告だ。六本木駅ホームのサイネージ前に立つと、閉じ込められた恐竜が暴れ出し、体験者は空中にかざした両手で扉を押さえ防ぐというものだ。さらに、近くの映画館の空席情報を表示し、集客も行っていた。審査員からは「興味を持ってもらう&rarr参加してもらい楽しませる&rarr送客、までの流れを映画の世界観でシームレスに実現した素晴らしい作品」と絶賛された。
JR東日本アイステイションズほか、全国交通広告媒体社23社局の「交通広告デジタルサイネージ入稿データ共有プラットフォームTADSS(タッズ)」は、テクノロジー部門を受賞した。デジタルサイネージの入稿仕様の標準化という課題に取り組んだ業界初の施策だ。1種類の標準仕様の素材を作れば、仕様の異なる複数社への入稿ができるというもので、複数社間の調整と全社のプラットフォーム費用分担で実現したというスキームが素晴らしいと高く評価された。
そのほか、広告部門を受賞した「マックシェイクカルピス TV×SNS(twitter)×OOH(デジタルサイネージ)3メディア連動企画」は、twitterのリツイート数を大型ビジョンにリアルタイムに反映させ、実際にテレビで放送してほしい「さわやかなCM」を投票してもらう企画。サイネージ、SNS、テレビというメディアミックスを実際に実現したという点が評価されている。
以上、簡単に紹介したが、全ての入賞作品の詳細はコンソーシアムのWebサイトで見ることが出来る。是非参考にして欲しい。

※このコラムは「宣伝会議」2019年8月号からの転載です。