Our TopicsVRヘッドセット×スマホ×サイネージ×ヘッドホンデバイスを組み合わせたプロモーション

ウェアラブル端末で、VRリスク体験

住友生命は10月26日から1週間、生活保険の新商品「1UP」の広告プロモーションで、JRやメトロ新宿駅で大規模なOOHメディア展開を実施した。この商品は、病気やケガで働けなくなった時のリスクに備える新発想の保険で、JR新宿駅を中心に展開したのは、ターゲットである「働く人」が最も多く乗り降りしている駅だからとのことだ。注目したのは、全長80メートルに及ぶ大型ボードと通路の柱全体を使って、まるで空間全体を貸し切ったかのようなメトロ新宿駅での展開だ。10月30日から3日間は、この空間を使って、身の周りに潜む様々な「リスク」を360°バーチャルに体験できるイベントを実施した。参加者は、中にスマートフォンを装着して使う「Gear VR」※というヘッドセットとヘッドホンを着用して行った(写真1)。まず、テレビCMが流れた後、突如通行者のいない目の前と同じ風景が映った。不思議と静かだ。これはヘッドホンのノイズキャンセリング効果で現実の雑踏の音を消しているせいだ。正面には黒いスーツ姿の男(エージェント)がいたが、殴りかかって来たので思わずよけようと体が動いてしまった。うまい具合に、別の男が応戦してくれた後には、ドローンが飛んで来たり、恐竜が口を開けて襲って来た。銃声がしたので顔を向けると、女性ハンターがいて、恐竜をライフルで撃退してくれた。と思ったら巨大な鉄球が転がって来て、ぶつかりそうになるというしかけだった。最後に瑛太さんと吉田羊さんが登場し、「やあ、危なかったですね」「是非、1UPご検討下さい」とパンフレットを渡すシーンで終了した。

臨場感を実感できる、音の演出が上手く効果的!

こバーチャルな体験だったが、エージェントやハンターは実際に現場で撮影したそうで、かなりリアルだった。何より静かな空間をつくったこと。その上にエージェントのパンチや蹴りの風切り音、ドローンのモーター音、恐竜の足音や鳴き声、銃声など、臨場感を実感できる音の演出が上手く、効果的だった。危ない目にも遭ったが、それはリアルと言うより映画のワンシーンをイメージさせ楽しめるものだった。制作したスタッフに聞くと、「“自分が居る場所に変化が現れる”という没入感をどこまで高められるかが苦労した点。体験現場での撮影、ノイズキャンセリングによる静寂した環境づくり、SE等の駆使などで現場の臨場感を高めることにこだわった」とのこと。ネット上でも「目の前の風景がVRになるので没入感が高い」と狙い通りの好意的なコメントが見られた。もう一つ注目したのは、バーチャル体験をしている人が見えている映像と音を、デジタルサイネージでリアルタイムに流していた点だ(写真2)。臨場感は別として、何が見えているのか体験者にしかわからない難点を解消している。28日の水曜日には、人気タレントを呼び記者発表もしている。テレビは「スッキリ!!」「ZIP!」他全12番組で合計24分間も取り上げられた。新聞は12紙、Webは345媒体と多くのメディアに報道された。宣伝担当者は「PRイベントが数多く報道された効果もあり、想定以上に多くの方に参加していただけた。特に訴求したかった若年層から好感を得ており、手応えを感じている」とのことだ。VRヘッドセット・スマホ・デジタルサイネージそれにヘッドホンを使った画期的なプロモーション。ブランドの世界観とコンテンツをどう合わせるか難しさもあるが、参考にしてみてはいかがだろうか。

※「Gear VR」は、SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.の商標または登録商標です。

※このコラムは「宣伝会議」2016年1月号からの転載です。