Our TopicsOOHを使った新しいクロスメディアのかたち

ツイッターとUstream 生中継で話題を喚起

3月の複数日程にわたって、首都圏各駅のポスター板に色とりどりのiPhoneケースが貼り付けられた。
出稿初日となった東京メトロ新宿駅のメトロプロムナードでは、ポスターの掲出作業が終わるなり、その場にいた人々が一斉に我先にと剥がしていく姿が見られ、その様子は圧巻であった。
最近はポピュラーになってきた「ピールオフ」「テイクアウト」広告(剥がして持って帰れる何かを貼り付けておく広告のこと)だが、事例が増えるにつれてマンネリ化も避けられない。
今回のプロモーションは「Brands for Friends」という招待制オンラインファミリーセールサイトの日本ローンチにあわせたもの。その中で、駅ポスター展開とインターネットとの融合性を図るにあたり、他の交通広告事例にはない初の試みと思われるものがあった。それが今、話題の「ツイッター」と「Ustream(動画共有サービス)」との同時展開である。
まず駅構内にiPhoneケースが貼り付けられたポスターを掲出している様子をUstreamで生中継し、さらにツイッターで実況。オリジナルのハッシュタグ(ツイッターで用いられる共通のトピックに関するキーワードのこと)も用意され、次々にオンライン上で話題が広がっていった。
その影響もあってか、その後各駅で実施された同プロモーションは、掲出から、わずか数時間で貼り付けられたケースがなくなるという、駅ポスターの展開としては異例の出来事となった。

WEBからリアルへ 新しい人の流れが生まれる

これまでOOHとインターネットを絡めたクロスメディア展開はQRコードやICリーダライターをポスターに内蔵させ、屋外で広告(リアル)を見た人がWEBに流れるというものが一般的であった。しかし、今回はWEB上で話題になりバイラル効果が発生。そのことによって、ポスターの掲出場所に居合わせた人だけでなく、情報をWEBで知ってから掲出場所に行くという流れが起きた。
このような事例ができたことでWEBからリアルへの流れが情報感度の高い人々の中で可能になったと言える。もちろん、これまでにも交通広告以外の他のメディアを使ったそうした事例はあったが、今後スマートフォンなどの普及によってネット(特にモバイル)による情報伝達はさらにスピードアップすることが予測され、この流れも加速するものと思われる。
ツイッターやUstreamは、まだまだ利用人口も少なく、ユーザビリティーの面で発展途上ともいえる。ただ、こうしたリアルタイムさ、モビリティーさはOOHとの相性がよく、今後より一層プロモーションの一部として連携していく関係にあるだろう。
さらに、これらの技術は新たなプロモーションメディアの要素として、プランナーたちにより多くの選択肢を与えていくはずである。既存の広告手法から脱皮して、新しくて面白い広告を作り出していくための大切な手段になるに違いない。

※このコラムは「宣伝会議」2010年4月号からの転載です。