Our TopicsOOHでしかできない動画広告

浅田真央選手がサイネージを滑走する

3月24日から1週間、フジテレビジョンは、「世界フィギュアスケート選手権」の番組宣伝でOOHメディアを使った。JR東日本の電車内にあるデジタルサイネージ、JRトレインチャンネルでは、浅田真央選手が「五輪で叶わなかったショートとフリー2つそろえるのが目標です」と大会に懸ける思いを語った公式記者会見の様子のCMをニュース風に放映し、期待感を高めていたのが印象的だった。驚いたのはJR品川駅の自由通路にあるJ・ADビジョンでの展開だ。中央改札から港南口に向かうこの通路には、65インチのデジタルサイネージが左右の柱の上にほぼ7m間隔で44面(片方向両側11面づつ)設置してある。この連続するサイネージ間を選手がジャンプなどの演技をしながら滑り抜ける姿を放映したのである。まるで、駅の通路がスケートリンクになったようで、浅田、町田、村上、鈴木、羽生の各選手が左右往復で約140mを滑走した。この媒体の特性をうまく活かした広告展開で、他のメディアでは真似はできないだろう。スピード感あふれる映像は、全日本選手権の時の映像から人物だけを切り抜き、バックを黒にして作成したとのこと。この処理だけで1週間もかかったそうだ。素材もサイネージ毎に映像が違うので22種類用意するなど大変手の込んだものだが、見事に成功していた。

60m級の「巨人」が、実物大で出現

講談社は、4月10日から3日間、JR川崎駅に直結しているラゾーナ川崎プラザで「進撃の巨人プロジェクションマッピング」を実施した。『進撃の巨人』は、謎の巨人が人類の天敵となって現れるストーリーが人気の「別冊少年マガジン」 に連載中の漫画で、コミックスが累計3,600万部を突破し、4月9日には最新の第13巻が発売された。今回はこれを記念したものだ。「60m級の超大型巨人を実物大で見せたい」という構想から1年かけたそうだが、最大の課題は実現できる場所選びだったのではないだろうか。過去東京駅でのイベントが中止になった例もあるように、安全に行う為の各種ハードルは高い。それをクリアしたのは、エンディングのクレジットに「特別協力 川崎市」とあったように行政側の協力を得たのは大きい要因だろう。施設の動員最高記録となる1万5千人以上が来場した回もあるくらい大人気で、警備費用もかなりかけたそうだが、地元警察の協力もあり整然と実施できていた。18台の機材から200m先のビルへ投影された映像は迫力満点である一方、巨人が迫る足音や壁が壊れるなどの音の演出も実に効果的で、アニメファンでなくても楽しめた。協賛はauスマートパスで、会員限定の特別観覧チケットを抽選でプレゼントしている。映像自体宣伝色を感じない作りだったが、ニコニコ生放送にて配信もされた他、メディア掲載数は、TV番組8本を含む360件にも上ったそうで実質的な宣伝効果は抜群だったに違いない。このように、OOHメディアでしか放映できないリッチコンテンツとも言える効果的な動画広告がある。今回の例は放送局や出版社なので、優れたコンテンツ自体を持っているからできたとも言えなくないが、参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2014年6月号からの転載です。