Our TopicsOOHメディアのネーミングライツ活用

スパイダーマンがあたかもその場にいるかのような演出

2017年7月15日、渋谷モディ壁面の大型ビジョン「ソニービジョン渋谷」には、目の前のスクランブル交差点をビルの上から映すリアルタイム映像が見えた。すると、スパイダーマンがモディのビルの壁面をよじ登ったり、渋谷の街を行き交う人々の頭上を敵とともに飛び回ったりするなどさまざまな映像が見られた。映画「スパイダーマン:ホームカミング」のプロモーション映像だったが、あたかもその場にいるかのような演出で見事なつくりだった。ソニーは渋谷モディオープン時にこの大型ビジョンのネーミングライツ(命名権)を取得している。「グループが有する映像コンテンツやテクノロジーを通じて、チャレンジ精神や遊び心にあふれたブランドイメージ、およびメッセージを発信していくとともに、従来の大型ビジョンの使い方に捉われず、街や来街者とつながることのできる新しいコミュニケーション媒体として、様々な形で活用していく」としていたが、それを具現化した実例の一つだろう。

増えた大型ビジョンのネーミングライツ

ソニービジョンだけでなく、ネーミングライツを取得した大型ビジョンは他に、渋谷のスクランブル交差点の「グリコビジョン」「DHCチャンネル」がある。2017年1月からは原宿表参道の「マイナビVision」も新たに加わっている。3媒体に共通しているのは、画面の周囲を広告主のブランドカラーに装飾しロゴを表示させている点だ。マイナビVisionではそれによって媒体自体が「よく目立つ、印象に残りやすくなった」と評判になったとのこと。また、付近で中継や街頭インタビュー等があった際にテレビ映像に映り込むといったパブリシティ効果を発揮した例もあったようだ。テレビの冠番組と似ているが、ビジョン自体のCM枠は全枠ではなく競合排除されるが他の広告主も入る。

駅のネーミングライツならではの効果的活用と

駅のネーミングライツでユニークなのは銚子電鉄のケースだろう。全駅実施しているが、特に笠上黒生(かさがみくろはえ)駅が2015年12月から髪毛黒生(かみのけくろはえ)駅(愛称)になった例が代表的だ。権利を取得したのはヘアケア商品の製造・販売を行うメソケアプラスだ。駅構内に看板が設置されるだけでなく、車内放送で案内されたほか、同社の時刻表にも掲載された。本物の昆布を使用した記念入場券も発売するなどこれらの話題はWebニュースや新聞、テレビなど多くのメディアで取り上げられ、パブリシティ効果を発揮した。SNSでも「育毛の新聖地、銚子電鉄髪毛黒生(かみのけくろはえ)駅誕生!」などとつぶやかれ情報は拡散した。翌年も契約が継続され、2017年の1月には「新春はつもうで(発毛・初詣で)」と書かれた看板が併設され、さらに「黒髪祈願」のヘッドマークを付けた特別列車が期間限定で運行するなどタイムリーな話題作りが実に上手い展開をしている。
このように、ネーミングライツというとスポーツ施設などが有名だが、OOHメディアでも実施されている。アイデア次第ではパブリシティ効果も見込めるものだ。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2017年10月号からの転載です。