Our TopicsOOHメディアによる インバウンド向け広告が活況

中国語で書かれた広告

今年1月下旬から2週間、三越伊勢丹ホールディングスは、三越銀座店の広告でOOHメディアを使った。銀座駅に掲出されていたのは、中国語で大きくキャッチコピーが書かれた大型ボード広告だ。驚いたことに、ロゴ以外日本語が見当たらない。担当者に聞くと、「ようこそ銀座へ!春節をお祝いします!」という意味だそうだ。同時に商品名や価格などは掲載されていないが、多くの商品写真が並んでいた。化粧品、ジュエリー、高級時計、旅行用品の他、日本茶や日本のウィスキー、重箱、寄せ木細工の小物入れ、錫製徳利、箸、まな板、包丁、ぐい呑み、南部鉄器の急須、江戸小紋のストールなど日本ならではの商品が多くあった。これは、初めて銀座に来た者や、まだ銀座三越に来店したことが無い中国の観光客に向けたものだという。観光バスで地上に降りる者は銀座三越の存在はわかるようだが、地下鉄を利用する者には伝える手立てが無かったため、取り組みを始めたそうだ。既に昨年も実施していたとのこと。 東京の観光名所として、外国人観光客も多い銀座。三越銀座店は、「世界中から来店されるお客さまに最旬を提案する」をコンセプトに外国人客への対応にも力を入れている。昨年10月1日からスタートした消費税の免税対象商品の拡大も追い風になって、1月の銀座店に占める外国人の売上シェアは約15%だという。春節では、これをさらに大きく上回るだろうとのことだ。同業の業界関係者に聞くと、このシェアの数字はトップレベルで、ここまで限定した広告は注目するが、実施はまだ考え難いそうだ。業界的にも先駆的な取り組みなようだ。

多言語で書かれた広告

銀座駅のビックカメラ有楽町店の広告もロゴ以外日本語が無い。但し、中国語(簡体字・繁体字)だけでは無く英語、韓国語、そしてタイ語で表示してあった。消費税8%のTAX FREE(免税)やUnionPay(銀聯カード)やVISAカードで支払うと5%のDISCOUNT(割引)サービスがある点に絞って広告訴求している。これは、旅行者にとって嬉しい訴求ポイントだろう。ビックカメラの2014年9~11月期の決算報告によると、外国人観光客による売り上げが前年同期比2.4倍(ビックカメラ単体)と大幅に伸び、収益増に寄与したことが窺える。 また、2月16日からセブンイレブンは、「Where can I get yen?」とした広告を実施している。JR東日本の電車内のドア横広告で掲出されたものは、コンビニ店舗のATMでインターナショナルカードなどを使って日本円の現金を得ることができるというものだ。これも日本語が無く英語以外、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語バージョンもあった。

多言語対応のデジタルサイネージ

外国語にも対応したタッチ式のデジタルサイネージを設置している駅もある。JR東京駅、東京モノレールの羽田空港国際線ビル駅、ゆりかもめの新橋駅、関西でもJR大阪駅などだ。乗客向け情報提供サービスとして活用されており、業務用中心で数も少なく広告的にはこれからだが、今後増加していくようなので注目だ。観光庁によると、2014年のインバウンド(訪日外国人)消費の総額は、前年比43.3%増で過去最高の2兆305億円に上った。市場は急成長し、その存在感が増している。そんな中、彼らをターゲティングするには、旅行者の行動動線の接点にあるOOHメディアに「母国語」で訴求することが有効ではないだろうか。海外旅行をしていて、日本語が書かれた看板に思わず目が行く経験は誰もがあるだろう。このような先駆的な取り組みを参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2015年4月号からの転載です。