Our Topics電車や飛行機とのリアル連動

ホームに入る電車にシンクロさせた表現

5月23日から3日間、小学館は都営地下鉄大江戸線六本木駅のホームにあるデジタルサイネージで従来型の交通広告にはない表現にトライした。電車がホームに入って来ると、CanCamの人気モデルの山本美月さんのスカートや髪の毛が揺れるというものだった。地下鉄のホームでは、電車が入ってくると風が吹くが、これにシンクロさせたのである。静止画のポスター風にポーズを決めていた山本さんが、あたかもその場にいるような錯覚を覚える表現だ。夜になると服装を華やかなミニドレスに変えるなど、ファッション誌らしい時間に合わせた演出も行われた。制作者によると、サイネージに音声センサーを付け電車の音ではなく、ホームに入ってくる直前に流れる「接近メロディー」の特定周波数を感知してプログラムが動作する仕掛けを作ったそうだ。しかも、連続して設置してあるサイネージごとに、時間差で映像が切り替わるように見せるという、非常に手の込んだものだった。現場に足を運び、映り方を考え、電車の止まり方のクセまでも把握していたのには驚きだ。OOHメディア分野でのクリエイターの鏡と言えよう。現場で観察し考える点は参考にするべきだろう。広告主によると、「美月ちゃん、かわいい!」とSNSでの広がりがすごかったのはもちろん、Webで知ってわざわざ見に行った人もいたとのことだ。NHKニュース「おはようニッポン」でも紹介され、CanCamの広告主からも反応があったという。PR効果は十分発揮されたに違いない。

飛んでいる飛行機にシンクロさせた表現

電車だけではなく実際に飛んでいる飛行機にシンクロさせたサイネージ表現もある。今年のカンヌライオンズのダイレクト部門のグランプリ他を獲得した 英国航空「Magic of Flying」だ。 飛行機がちょうどピカデリー・サーカスの上空に差し掛かった際、屋上のデジタルサイネージでは、しゃがんでいた男の子がゆっくり立ち上がり、その飛行機を指差した。同時にフライトコード(便名)とどこから来たかを表示した。まるで、子供がよく思う疑問「この飛行機どこから来たの(行くの)?」に答える広告のようだ。写真の例では、BA(British Airways)475便でスペインのバルセロナ発で、間もなくロンドン・ヒースロー空港に到着する飛行機だということがわかる。実は、受賞前にYouTubeでこの映像を見た時は、人がアナログで操作していたのではと思っていたのだが、とんでもない間違いだった。200Km先の信号を受信するトランスポンダー(BAの飛行機のみを感知するアンテナ)を近くに設置し、飛行機の位置や高度、飛ぶスピードなどといった情報がクラウドサーバーに送られ、このサイネージ(digital billboard)でシンクロさせ表示していたのである。フライト情報というビッグデータをデジタルテクノロジーでクリエイティブに応用した点は驚きだ。YouTubeの再生回数は137万超えもあるくらい注目されている。

このように、電車や飛行機の動きにリアルに連動する表現もデジタルサイネージなら可能で、今後も増えていきそうだ。簡単に真似はできないだろうが、チャレンジしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2014年9月号からの転載です。