Our Topics縦長画面に合った動画表現

交通広告を大量出稿

2014年6 月から7 月にかけて、ヤクルト本社は、乳性飲料「ミルージュ」のリニューアル発売のキャンペーンで交通広告を行った。人気女優の川口春奈さんが「ゴキュン!と元気な味がする」などとメッセージする印象的なものだ。この期間に集中的な出稿があったことから、電車内や駅で見た人も多かったに違いない。広告主によると、交通広告は多くの人が反復的に接触できるものであり、特に首都圏は人口も多いので、効率よく商品認知を高めるためにとても有効な媒体だと考えているそうだ。中づりや窓上、車内サイネージでもよく見たが、注目したのは多くの駅で実施していた駅サイネージの表現だ。

縦長画面にテレビCM

東急東横線・渋谷駅改札の外で、ヒカリエの入り口にあるサイネージでは、画面を3 分割して中央に30 秒のテレビC M を放映していた。この媒体は、待ち合わせの場所にあり、1 社独占でエリアジャックして使えることから、C M の持つストーリー性を活かして商品理解を図ることができる。16:9で横長のC M映像を、縦長のサイネージに放映するにはこのようにするのが一般的だ。テレビC M との連動を図る多くの広告主が取る定番手法でもある。上下の余白部分は静止画でおさえるのが一般的だが、日本コカ・コーラのスプライトの広告のように、上下の部分も泡が弾けている動画を見せ、シズル感を演出する手法もある。また、C M動画の位置を上側、下側などにした例も見るようになった。

一瞬で広告が分かる表現

ミルージュの広告では、静止画を切り替えて見せる表現も放映していた。こちらは画面全体を大きく使い、川口春奈さんや商品のボトルは少し離れたところからも視認できた。駅のデジタルサイネージでは、待ち合わせの人は別だが、通行者は歩きながら見ることが多い。そんな視認状況でも効果的に訴求できるのは、むしろこちらの表現ではないだろうか。ヤクルト本社によると、多くのC M を順番に見せるロール方式を取る媒体だと視認時間が短いので「一瞬で広告が分かるように」このようなデザインにしたそうだ。駅サイネージを活用することの多いH&Mやサントリーなども決まってこの表現を行っている。共に訴求ポイントを絞り、シンプルな表現をすることが特長だ。H&Mは、商品を着た有名モデルに価格、ロゴだけ。サントリーのハイボールでは、角瓶を持った井川遥さんと唐揚げの画像2種類が「ハイカラ」のキャッチの中、切り替わるのみである。画像と画像の繋ぎ目を工夫する広告主もいる。「トランジション効果」と言うが、スマートフォンのように横からスライドさせたり、縦に動かしたり、本をめくれるようにしたり、静止画+トランジション効果で、動きがあり注目を集める表現も出てきている。

テレビCMの動画を縦型にトリミング

今年春から放映された東京メトロのテレビC M「東京の朝」篇では、主人公の堀北真希さんを中心に横型の動画を縦型にトリミングして駅のサイネージで放映していた。視線が集まる人物中心にトリミングすれば不自然さは感じないことが分かった。すべての動画で可能ではないが、今後はこういった例が増えていくのではないかと思う。このように、以前紹介したインタラクティブなものや、一面ごとに違う映像をかけるなど特殊展開を除いた、通常の縦型画面の駅サイネージに合った表現も進化していることが分かる。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2014年12月号からの転載です。