Our Topics特殊印刷技術をカギにしたOOHプロモーション

静電インクを使ってスマホを操作

サッポロビールは、「麦とホップ The gold」のリニューアル発売に伴い、2016年2月6・7日、渋谷パルコの前でOOHプロモーションを行った。縦2.1m×横6mの大型ボードには、麦とホップ The gold缶の写真が600本以上も印刷されていた。スマートフォンをかざして、当たり画面が出たら試供商品がもらえるというもの。このボードの印刷には、「静電インク」という、スマートフォンが発する静電気に反応し、アプリを操作したのと同じ状態になる特殊な印刷技術が使われていた。以前、大塚製薬がiPadに雑誌広告を載せると自動的に楽曲とミュージックビデオが再生される「POCARI MUSIC PLAYER」という展開を行ったが、それと同じ技術だそうだ。実際にスマホをかざしてみるとすぐに反応し、ブーブーと振動音がした。画面を見ると「YOU MISSED」の表示と残り秒数が出た。隣の人が当たったようなので、同じ場所にかざしてみたが外れだったので、それほど単純なつくりではなかったようだ。制限時間は1分なので、スリリングな気持ちにもなりチャレンジしたが、残念ながら「MISSION Failed」となって終了した。多くの通行客が立ち止まり、実施した人は2日間で約1500人になったそうだ。「POCARI MUSIC PLAYER」の時も今回も、アプリではなくWebサイトを表示させていたようだが、今回のようにスマホを貸し出す方式であれば、アプリをダウンロードさせ、起動させる手間も省く良い方法だろう。

スクラッチ印刷を活用

2016年2月15日から行われたPlayStationR4用ゲーム「進撃の巨人」のプロモーションも印刷技術がカギとなっていた。JR新宿駅北通路の2つの広告ボードをつないで掲出した、高さ2m40cm、長さ約12mの巨大なポスターには、「スクラッチ印刷」が使われていた。これは、全体をカラー印刷した後、隠したい文字や絵柄の上に不透明なシルバーインキを使ってシルク印刷をするのが一般的なものだ。コインなどで削るとはがれ、当たり外れが出てくるといったものになる。今回は、シルバーではなく、総勢50人の巨人の姿が描かれていたので、シルバーインクの上にさらに印刷をするといった、手のこんだ手法を取ったように思える。これだけ広い範囲のスクラッチ印刷を施すというのも画期的なことだろう。ゲーム発売日の18日には、ポスターのスクラッチを削る「ウォール・新宿奪還作戦」が実施された。コインで削り、巨人たちを消して「駆逐」するというわけだ。その下には13人の主要なアニメキャラクターに加えて、94個のQRコードが出現。それ読み込むことで、スマートフォン用に各キャラクターや巨人たちの壁紙用画像をダウンロードすることができたのである。当日は朝から約250人を超えるファンが集まり、1時間も経たないうちに作戦が終了したようだ。その後からも、画像を取得する人たちの姿が次々に見られた。ヤフーニュース始め、多くのメディアに取り上げられ、SNSでも情報拡散がされている。このように、アナログな特殊印刷技術をカギとし、さらにスマホを連動させた展開も、ブランドの世界観に合えば、有効な手段と言えるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2016年5月号からの転載です。