Our Topics普及が進むLED OOHで新しい広告表現

大型ポスターにLEDを内蔵

昨年末、JR新宿駅に光るポスターが登場した。フジテレビの正月特番「もう誘拐なんてしない」の広告だ。番組出演者の背景が、まるで後光がさすかのように、黄緑色と水色の光の帯が放射状に交互に点滅していた。
光の変化は遠くからも目立ち、アテンション効果は抜群であった。多くの通行人が時には立ち止まり、目をとめていた。これは、ポスター上に598個の「LED」を配置し、その上に色のついたフィルムを貼って光らせたものだ。なんとも派手な印象で、正月特番らしい華やかさが出ているデザインだったと思う。
年明けには、やはりフジテレビが表参道駅の柱巻き広告を光らせた。こちらは、柱のまわりを3分割して出演者が掲出してあるのだが、そのポスター全体が数秒ずつ光るしかけになっていた。これには、LEDの一種である「無機EL」が使われた。シートの厚みが非常に薄く、曲げることもできるので設置すること可能だったという。

LED電球の広告に実物を使用

昨年10月には、メトロの新宿駅でもLEDを使った広告展開が実施された。ピープルが販売する通勤用自転車「ジェントルギア」の広告だ。この商品の特長は、後部にLEDを使ったウィンカーとブレーキランプがついている点だ。ポスターのモデルの男性が乗る自転車の後部に本物のLEDが使用され、実際にウィンカーが点滅する。スイッチを押すとそれぞれのランプが付く体験コーナーも設置された。派手さは無いが、これほど商品特性を正確に伝える手段は無いだろう。添付してあったパンフレットを持っていく人も多く見られた。
以前にも、アウディジャパンが六本木の屋外ボードで、実際の車と同じヘッドライトの位置にLEDを取り付けて点灯させ、世界で初めてLEDヘッドライトを採用した点をアピールする広告を展開したことがある。
また、パナソニックは、JRのベンチに設置された「LED電球の広告」に、本物のLED電球を内蔵。夕方からは実際に点灯させることで、印象的な広告となっていた。LED電球はこれから普及が進むという時期だったため、どんなものかを認識してもらうには、この「実照広告」は有効だったに違いない。
このように、使い方は違うがLEDはOOHメディアでも普及が進んでいる。もっとも、デジタルサイネージを使えば、動画にしてこのように見せることも容易だろう。しかし、アナログポスターにLEDをプラスした広告手法は、広告のインパクトや、リアルに製品特性を伝えるという点では優れていると言えるだろう。

※ このコラムは「宣伝会議」2012年2月号からの転載です。