Our Topics新鮮なアイデアで国産野菜をOOHメディアでPR
駅に巨大野菜が生えた
8月31日から1週間、JAグループは、国産野菜の広告プロモーションでOOHメディアを使った。丸ノ内線新宿駅の地下通路に行って目に入ったのは、巨大な野菜だ。驚くことに2m以上の大根、にんじん、なす、きゅうり、さつまいも、とうもろこしなど棒状の野菜が15本、にょきにょきと地面から生えていたのである。担当者によると、8月31日は「野菜の日」であり、都会の人、とりわけ野菜の摂取が少ない若年層中心にもっと国産野菜に関心を持って欲しいと思い企画したとのことだ。巨大野菜のベースは柱で、柱巻き広告だ。通常はシートを貼り平面だが、今回は立体的形状になっている。さつまいもやきゅうりには不規則な凹凸やトゲトゲがあり、大根にはきちんと“ひげ根”が生えてある。とうもろこしは皮と実と髭がある。実の一粒一粒は柔らかく、微妙に色合いが違うなど非常にリアルだ。材料は、発泡スチロールを削り出し、表面をウレタンコーティング・塗装で仕上げたそうだが、とうもろこしの粒は、原型を型取りし、発泡ウレタンで成型し塗装。皮は、すじの入った生地に塗装。ヒゲは麻を使うなど手が込んでいる。担当者が製作現場でその質感を確認し、本物に近いように修正も依頼したそうで、その心意気が伝わってくる。巨大野菜の威力は抜群で、多くの通行者が驚き立ち止まっていた。スマートフォンで撮影する人も多く、SNSを中心に拡散され、Twitterでは1万以上リツイートされた例もあった。「地下の野菜がリアルすぎて通る度にお腹すく」といったコメントの他、「思わず触ってみちゃいました。トウモロコシがとてもリアルな作りですが、実はクッション素材で触ってみるとむにゅ?って?なんか幸せな気持ちになるかも」など触った感想を述べる人も多くいた。他のメディアでは難しい触覚にも訴える広告になっていた。また、スマホでQRコードから「今日のラッキー野菜」を占うことも出来た。日本テレビの「スッキリ!!」など10番組で取り上げられた他、新聞は5紙、Webシーンでは、ヤフーニュースなど少なくとも200件以上数え切れないほど取り上げられている。PR的には大成功だったろう。
その場で野菜を購入できた
柱巻き広告と同時に目を引いたのは、高さ約2m、左右約15mの大型ボード4面での展開だ。「JAウォールファーマーズマーケット」として、全部で20種類の野菜がぎっしり棚に詰まった状態で描かれていた。緑、赤、黄、橙、紫など野菜はこんなにも色彩が豊富だったのか!とそのカラフルさに圧倒された。野菜毎にQRコードが表示され、「買い物カゴに入れて下さい」とあった。読み取ると特設サイトに接続され、その場で全国のJAの直売所等の野菜を購入することが出来た。オフラインからオンラインへの誘導を促す試みだが、約1万人が特設サイトにアクセスしたり、ラッキー野菜くじを楽しんだとのことだ。このように、巨大で本物そっくりの野菜を作ったり、カラフルな色を強調した広告表現は、OOHメディアの使い方としては非常に上手いやり方だ。野菜の栄養面などの機能的価値ではなく、見た目やさわった感触など情緒的な価値を前面に押し出して興味を喚起し、成功している。通行者がスマホを使うことを想定した仕掛けも随所に見られた。野菜だけにアイデアの「新鮮さ」が大切だと言えよう。参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2015年11月号からの転載です。