Our Topics新橋駅のハイボールで注目集めるOOHにおける音の効果

音からCMを想起 社員のモチベーション向上も

7月19日から1カ月間、JR新橋駅の発車メロディが、一カ月間サントリー角瓶のCMソング「ウイスキーが、お好きでしょ」になった。「酒場の聖地」のイメージがある新橋で、発車メロディにCMソングを流したいというJR東日本への提案から始まり、安全上問題がないことを確認し、実現したという。
メロディを聴いてテレビCMを想起した人も多いだろうが、これは「イメージャリートランスファー効果」を利用した施策と言えるだろう。この効果は、「広告(特にテレビCM)で覚えた情報の、他メディアへの持ち越し、再現」を意味する。ラジオCMを聞いて、テレビCMを想起するという効果については、以前より知られていたが、OOHメディアの音の広告でも当てはまるだろう。
このような事例として、以前から知られているのが、サッポロビール本社のあるJR恵比寿駅の例だ。ヱビスビールのCM曲である映画「第三の男」のテーマ曲が使われている。今では映画を知らない世代も多く、CMの想起効果の方が強いだろう。通勤で利用する社員のモチベーションを高める効果も期待される。キリンビール「一番搾り」のCMソング「若いってすばらしい」も京浜急行電鉄の生麦駅で採用されている。これはビール工場の最寄り駅だからだが、同様な効果が期待できる事例だ。
現状、発車メロディは正式な広告商品ではない。公共性が高い領域で、地域密着性・期間限定など、何らかしら条件が必要だろうが、新橋のような例を望む業界関係者は少なくないはずだ。

電車内は「聖域」 音を流せる新メディアも登場

公共空間において、音の広告は難しい面がある。常に賛否両論で、音を不快と思う人も少なくない。屋外では東京都のように公害防止条例の音量基準の規制を受ける場合もある。交通機関においても、業務用放送と被らないことが要求される。
特に電車の中は「聖域」に近く、JRトレインチャンネルも音声なしで放映されている。ただ、バスや一部の電鉄では、車内アナウンスの中に会社や施設の名前を入れる広告メニューがあり、活用されている。ゆりかもめでは、この夏、フジテレビの人気アニメ、『ONE PIECE』の人気キャラクター・航海士ナミの声で、車内放送が行われた。これはれっきとした広告だ。商品の告知などは無く、業務アナウンスをするに留まっているが、コアなファンには有功だったようだ。
広告主からのニーズも根強い。宅配水のクリクラからは、印象的なCMソングをOOHメディアで流したいとの意向があった。そこで、駅構内では音声付で放映できる丸ノ内線ステーションビジョンを採用。さらに、メトロの新宿スーパープレミアムにスピーカーを5台設置してCMソングを流した。周辺店舗への配慮から、特定の場所でしか聴こえない指向性の強いものを使用したが、音に反応してポスターを見る人もおり、アテンション効果も見られた。
OOHメディアにおける音の効果は、活用に向けて課題もあるが、視覚要素と合わせ、その重要性を改めて見直すべきではないだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2010年9月号からの転載です。