Our Topics山手線新型車両導入で脚光を浴びた車両デジタルサイネージ

E235系が営業運転を開始

2015年11月30日、山手線に次世代の最新型車両であるE235系が1編成導入された。「まど上チャンネル」と「サイドチャンネル」が新たに設置され、デジタルサイネージの面数が大幅に増えたのが大きな特徴だ。一方、なくなると言われていた「中づり」が広告媒体として搭載されていたことを多くのメディアが取り上げた。乗客や広告主ら関係者の意見も踏まえ判断したと報道されていたが、安堵した業界関係者は少なくないだろう。「自社の広告がいつも出ている」「日程の始まりや期間に自由度が高い」「紙以外の素材や形状でブランドの世界観を出すことも可能」といった現状のサイネージにはない中づり広告の特長が維持されたのは広告主にとっても良いことだろう。しかし、紙のまど上広告はなくなっている。販売方法は未知だが、こちらの需要はサイネージに移行すると考えられる。当面この1編成は、広告貸切電車として運用されることになり、多くの広告主の決定が入っているようだ。しかし、車両のシステムの不具合で運行がストップしたままなのは心配だ(12月15日執筆時点)。一刻も早い復帰を望みたい。

脚光を浴びた電車内サイネージ

電車内にあるサイネージは、年々増加の一途をたどっている。面数は2015年4月時点でも4万6000面を超えている。東京メトロでは、2016年度中に銀座線に全車両導入される他、南北線でも搭載が始まる。また都営地下鉄大江戸線でも広告運用が計画されている。トップのJR東日本のトレインチャンネルは、搭載路線の輸送人員を単純合計すると1日だけで1400万人を超える(オリコム推計)。エリア限定だが、第5のマスメディアと言ってもいいだろう。実際に(音声は出せないが)テレビ媒体を使っている広告主が多く出稿しており、12年連続で広告収入も右肩上がりだ。車内サイネージ全体の広告到達率は平均37.0%と高い(交通広告共通指標推進プロジェクト調べ)。任天堂の「大人の60秒講座」や東京メトロビジョンでのコーセーの「美人のヒミツ」など、役に立つ知識や、共感を呼ぶオリジナル番組型CMもある。「好感」「親しみ」「商品に興味を持った」など、企業イメージや商品への興味関心向上に寄与している結果も出ているようだ。通常のCMでも「日経電車版」やコナカの「松岡修造のスーツ魂」のようにQ&A・豆知識タイプの付加価値の高いサイネージ限定の表現で訴求する広告主が増えている。主なターゲットは、通勤・通学者だが、何より乗り降りする駅周辺には、コンビニエンスストアやドラッグストア、家電量販店、百貨店、あるいは自社店舗など、リアルに購買やサービスを受けられる拠点がある点も大きい。購買地点に近い広告訴求がブランド選択支援に有効とするリーセンシー効果を発揮できるメディアだ。テレビ広告に追加して実施したところ、駅周辺の店舗の売り上げが伸びたことからレギュラー展開を決めた広告主もいるようだ。その日の気象情報等から発表される指数コンテンツと連動した企画も行われている。媒体社によって違いもあるが、このサイネージコンテンツのリアルタイム化は、進化するに違いない。脚光を浴びた車内デジタルサイネージの広告活用、検討してみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2016年2月号からの転載です。