Our Topics大正製薬や西川産業の中づり広告が既成概念を打ち破るデザインで話題に

大正漢方胃腸薬は忘年会に合わせ割り箸が箸袋に入った形の中づり広告

大正製薬は2018年12月3日から9日まで、大正漢方胃腸薬のプロモーションで東京メトロの各線1~2編成の中づりだけをジャックする「中づり広告貸切電車」を行った。忘年会シーズンの食べ過ぎや胃の衰えに対して訴求するためだ。
驚いたのはそのデザインである。全て割り箸が箸袋に入った形になっていた。忘年会で食べることを一瞬で想起させる優れた表現だろう。関係者によると、通常のより厚手の紙を切り抜き加工してつくったとのことだ。箸袋の部分には、「部長より胃腸の機嫌が気になります。」「好物は胃もたれしないもの。」「草食系ではなく、少食系。」など、忘年会シーズンでのあるある的心情をユーモラスに表現しているコピーが12種類掲出。商品のパッケージ写真の脇には「最近、胃、しんどくない?」や「疲れた胃の調子を戻す」大正漢方胃腸薬と商品名が書かれていた。
宣伝担当者によると年末の食べ過ぎに関するインサイトと胃の衰えを感じ始めるインサイト双方にリーチする表現での訴求が重要だと考えたという。
さらに、ポスターと同様のデザインの本物の箸袋も作成し、都内約150の居酒屋チェーン店舗で50,000部配布するSP展開も行い、生活者の動線も押さえていた。胃腸薬は飲食前か飲食後に想起させ服用を促すのが通例だが、今回は飲食中も訴求することができており、その点でも効果的だったに違いない。

西川産業が本物の羽毛布団の中づりで実際の触り心地を訴求

西川産業も2018年11月26日から12月2日まで、同じ東京メトロの中づり広告貸切電車を各線1編成ずつ実施。驚くことに本物の中づり型羽毛布団を薬240個作成してつり下げた。「普通の広告ではなく、どうにか注目してもらえるやり方はないか」と考えるなかで「実際の布団を広告にしてみては」という声が上がり、3か月ほどかけて形にしたという。狙いは的中し、多くのWebニュースに取り上げられ、SNSでも情報が拡散された。実際に見た人は「羽毛布団使ってるのすごすぎた」「なかなかの触り心地」「通常であれば羽毛布団の良さをPRする文章と写真で訴求を図るところを、実物を展示するというウルトラCを見せた。これならば確かにわかりやすい」とつぶやくなど、訴求力は抜群だった。写真を投稿したツイートの中には4,200件以上のリツイート、7,000件近い「いいね」がついたものもあり「斬新ですね。触ってみたいです。」「巧みな広告ですよね」など、リアルに接触出来なかった人たちからも好意的なコメントが集まった。
このように、アナログな中づり媒体の既成概念を打ち破るデザインでの展開は、一瞬だけ見ても伝わるアテンション効果の高い表現であり、企画次第では情報拡散も行われる可能性を持っている。デジタル媒体にはない強みとも言えるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2019年3月号からの転載です。