Our Topics主役にも脇役にも使えるデジタルサイネージの活用法

1社独占で、主役になったデジタルサイネージ

10月1日、小田急線の新宿駅西口地下コンコースから、JR新宿駅西口地下改札口外にかけてのエリアが、東京電力の広告でジャックされた。デジタルサイネージ(デジタルピラー)46面を中心に、シート6面、フラッグ12面の同時掲出である。46面のデジタルサイネージは、JR品川駅自由通路の44面を上回り、駅コンコース内1ヵ所の展開では国内最大規模である。
デジタルサイネージは、紙のポスターと違い、時間によって映像(画面)の切り替えが可能で、複数の広告主の映像を順番で放映することが多い。しかしOOHでは、何分かに1回放映されるローテーション型の広告ではなく、いつ見ても自社の広告が出ているよう、独占的な使用を希望する広告主も少なくない。今回の新宿駅地下コンコースは「1週間1クライアント売り」という販売方式を小田急側は採用したため、広告主は2期2週間にわたって空間と時間を占有して訴求することができ、たいへん迫力があった。
品川駅構内のデジタルサイネージでも、パナソニックが1社独占で広告を実施した。これは、広告枠すべてを買い切っての独占である。しかも通常はサイネージの画面を縦型で使用しているところを、今回は横型で展開した。もともと縦でも横でも出来るように設計してあったので実現したが、初めての実施例として話題になった。
独占的な広告は、いつでも自社の広告を訴求できる点のほか、表現にバリエーションを加えることで通行人にインパクトを与えることができる点も魅力だ。また、他にノイズがないので、ブランドの世界観を出せるなどのメリットがある。

9面連続のサイネージをあえて「脇役」として使用

フジテレビは10月12日、新ドラマ「流れ星」の広告キャンペーンの一環として、東京メトロの新宿駅の柱に9面連続の独占的デジタルサイネージを設置した。通行人の動線を考え、画面の角度を微妙に変え、人々に向ける工夫もして効果的であった。
通常であれば、9面連続のサイネージはOOHの「主役」となる。しかしこの時は、それほどのサイネージを脇役にするものが同時に設置された。「本物のクラゲ」である。
これは、ドラマの舞台で、主人公が水族館に勤務しているところから来ている。実際、ロケをしている新江ノ島水族館とコラボし、ミズクラゲ80匹を一週間展示したのである。本物のクラゲの訴求力は強く、多くの人が集まっていた。ドラマのはかない世界観のポスタービジュアルと、ここでしか観られないスペシャル映像(サイネージ)と共に訴求するという3点セットの試みだったが、意図は十分に伝わったのではないかと思う。
このように、デジタルサイネージは、OOHメディアの中で、主役にも名脇役にもなれる存在感を増してきていると言えるだろう。

※このコラムは「宣伝会議」2010年11月号からの転載です。