Our Topicsデジタルサイネージの原点に立ち返る外に出られない今こそO O H メディアの役立つとき
自宅外で促すコロナ感染予防
OOHメディアが担う注意喚起の役割
緊急事態宣言以降、電車や駅、繁華街の人出は減り、OOH広告の分野は厳しい状況を迎えた。そのような環境の中でも「その時、その場所にいる人々に相応しいメッセージを伝える」というデジタルサイネージ広告における表現の原点を実践したケースは多数見受けられた。まず、重要な事例として、政府や自治体の広報で感染予防の注意喚起を促すものが挙げられるだろう。その中でも、ダイキン工業が行った屋外LEDサイネージ「大ぴちょんくん」を使った展開は優れた事例だった。
このサイネージでは、通常時においても、温度と湿度などの変化に伴い、頭の色や顔の表情を変えていたが、今回、大阪府が発令した「新型コロナ警戒信号」に合わせてライトアップを3色に変化させたのである。
ダイキン工業の担当者は、大阪府も太陽の塔と通天閣のライトアップを行ったが、それらは大阪の中心地より離れている。「大ぴちょんくん」は大阪の玄関口である新大阪、梅田に設置しているので、多くの人の目に触れることから、より人々の役に立つことができるのではないかと考えた、と話している。
優れたOOH施策として、もうひとつにたき工房の事例を紹介したい。たき工房は、大型ビジョンの媒体社であるヒットの協力のもと、外出自粛要請期間中の在宅を呼びかける「ステイホーム」啓発動画を作成し、渋谷スクランブル交差点や大阪・道頓堀の大型ビジョンなどで放映した。ビジョンを窓に見立て、カーテンの向こう側の「屋内」で、ゲームや読書、パソコンでのビデオ通話に興ずる人たちの姿をシルエットで描き、ステイホーム中の人々の暮らしをとても温かみのあるものとして表現していた点が印象的だった。
デジタルサイネージが世界を繋ぐ
人々に届ける支援のメッセージ
パス・コミュニケーションズは、渋谷や原宿表参道の2媒体で、医療従事者などのエッセンシャルワーカーや、働くすべての人々へ向けて”感謝のメッセージ”でエールを送った。特に、外出自粛中もオフィスへの出勤を余儀なくされ、その大型ビジョンの前を通る人々には効果的だったに違いない。
また、同社は、英国のOOH会社であるTalonとワールド・アウト・オブ・ーム・オーガニゼーション(WOO)が、世界23カ国153都市70社以上の街頭ビジョンや事業者の協力を得て開始した、「世界の街角へあなたの”愛”を届ける、#Sending Loveキャンペーン」にも参加している。これは、消費者が「ハート型のハンドサイン」や「ハートモチーフ」など、”愛にまつわる”写真を専用サイトに投稿し、国・都市・画角を選択すると、『スペインから東京、日本へ#愛を送ります』などといったメッセージとともに、投稿写真が指定した各都市のデジタルサイネージで放映され、後日実際に放映された様子を見られる写真が投稿主に送られてくる仕組みだ。
世界的な参加型キャンペーンだったが、海外渡航が制限されるなか、現地の人たちに「愛」や「思い」を届けようと発案されたとのことで、社会的にも意義ある試みであった。
今回紹介した事例を見て改めて考えたことは、OOHメディアはその時、その場所にいる人々に相応しく、必要なメッセージを伝えるのに最適なメディアであるということだ。さらに、公共の場に設置されていることから、企業だけでなく個人を含めた「ソーシャルグッド」的なコミュニケーションに最適な媒体ともいえるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2020年9月号からの転載です。