Our Topicsデジタルサイネージのパーソナライズ化
「デスノート」の世界観をサイネージで表現
6月29日から1週間、日本テレビ系ドラマ『デスノート』のプロモーションが、東急百貨店東横店2階のサイネージを使って行われた。36面すべてのフレーム自体をラッピングし、“夜の東京”というイメージにした。そこに赤い文字で番組名、放送開始日時などを表示。通路全体が普段と違う色彩感になり番組の世界観を演出していた。注目は、2つのサイネージを使ったインタラクティブなイベント展開だ。ドラマで「夜神月」役の窪田正孝さんと「L」役の山﨑賢人さんが出演するものだ。「Lの前に立つと何かが起こる」と書かれたサイネージの前に立つと、自分の顔がキャプチャーされ、Lが「あなたはこういう性格ですね」とプロファイリング結果を表示した。筆者の場合「性別:男性、推定年齢:37歳、性格:シャツが常にインしていないと、落ち着かない折り目正しすぎる性格」だった。思いあたる部分もあるが、年齢はいくらなんでも若すぎだろうとニヤけてしまった。見ていると、ごく稀だが男性なのに女性と出たり、実際より老けた年齢が出て友人にツッコまれている場面も見られた。性格も「幼稚園のときの先生が大好きで、今も年上に目が行きがち」といったありそうなものから「舅(しゅうと)と鼠(ねずみ)の見分けが付かなくて、結婚して苦労する」など、あり得ないと言いたくなるものまで、総じて笑いを取る内容が多かった。実際にドラマのLのように言い当てるのは不可能であるし、真面目すぎてもおもしろくないだろう。制作者によると、そこでわざと外し、ツッコミどころ満載なほうが楽しめると考えたようだ。飽きられないように80パターン以上も作成したという。一方、「夜神月の前に立つと何かが起こる」と書かれたサイネージでは、夜神月が、こちらを見つめながら書き始めた。当然、デスノートに名前を書いていると思ったが、見せられたのは、なんと自分の似顔絵だった。撮影した画像を、線画風のイラストに変換したもののようだ。また、ネット上では、「間近に見つめられてドキドキしちゃった」「この視線で完全に撃ち抜かれました」といった、主人公との1対1の感動体験をシェアしている者も多くいた。海外の人や年配者、ストーリーを知らない人も含め7日間で1万人以上が参加し、初回の関東地区の視聴率も16.9%で、好スタートを切っている。
自分がスポーツ紙の1面を飾る
JRAは、今年5月の日本ダービーのプロモーションを、京王新宿駅で行った。専用サイネージの前で騎手用の帽子を被り撮影をすると、写真は自動でスポーツ紙のトップ記事のように加工され、Facebookの特設ページにアップロードされた。そこから、画像は自由にダウンロードやシェアすることができた。驚いたことに、数分後には駅のデジタルサイネージにも自分の姿が映った。紙面のつくりは毎日変わり、ネット上に掲載された参加者は個人の他、カップルや家族など幅広く、数えると500組以上あった。このように、インタラクティブなサイネージ展開の中で、自分の性格の分析結果や、似顔絵、ダービー騎手になった自分を表示するといった試みは、サイネージのパーソナライズ化と言えるだろう。参加者の多くが、自分が主役の映像をスマホで撮影し、話題のネタとして使っていた。それには、伝えやすい構造を考え、見飽きないようコンテンツを工夫する必要があり簡単ではないが、参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2015年9月号からの転載です。