Our Topicsサイネージ+キネクトで生む体験価値 新たなOOHの活用法

映画のストーリーの世界観を再現

東宝は、2015 年1 月9 日から上映されたアニメ映画『劇場版PSYCHO-PASSサイコパス』のプロモーションでO O H メディアを使用した。注目は、丸ノ内線新宿駅で一週間実施した展開だ。高さ約2メートル、左右約15メートルの大型ボードに、デジタルサイネージ4 台をマルチ画面にして3 カ所に設置。映画のストーリーの中心にある世界観を見事に表現した。この映画にある近未来の日本では、人間のあらゆる感情や社会病質的心理傾向は、「シビュラシステム」と呼ぶものによって計測され、管理されている。その値が「サイコパス(係数)」だ。犯罪を犯す可能性が高い者は数値が高く表示され、係数が一定値を超えると、治安維持にあたる主人公の公安局刑事たちが裁くというものだ。ここでは、このシステムを再現。鏡のように目の前が映るサイネージ画面に通行者が立つと、顔写真入りのプロファイルシートが表示され、その中にサイコパス係数(犯罪係数)がランダムに出た。100を超えると、画面に刑事たちが出現し、特殊拳銃ドミネーターに撃たれるというものだ。犯罪を犯す可能性の高い数値のため、200 を超えた体験者の「オレやばいかも」という声が聞こえる一方で、執行されるのを待ち望んでいたために、100以下で「いい数字が出なかった」と残念がる人も多かったようだ。友人同士で係数の高さを競い、笑顔だと数字が高くなるという説も出たほどだ。その画面をスマートフォンで撮影していた人も多い。会場周辺では、サイコパスについて知っている人が知らない人に説明する場面や係員に質問する者も続出した。リアルな現場で口コミが行われ、認知が広がったと言えるだろう。『めざましテレビ』に紹介され、インターネット上でも話題になったためか、参加者が増えて3 日目からは順番待ちになった。隣の広告ボードに掲出してあった「攻殻機動隊新劇場版」の主人公らが登場するコラボレーション企画も行われた。同じ映画会社ならではのサプライズだろう。さすがに、規制がかけられたが、200人近くが列を作り、長さは40 メートル以上に伸びることもあった。用意していたチラシも9 万枚がなくなった。観客は初日から4日間で171545 人を動員。興行通信社によると、興行収入は初登場第4位にランキングされたそうで、絶好のスタートを切ったようだ。

自分がクリスタルのシルエットに

サイコパスのプロモーションでは、通行者を認識するセンサーや映すカメラにマイクロソフトの「キネクト」を採用した。キネクトは2014 年にバージョンが上がり、画質の向上や同時にキャプチャーできる数も増えている。これを使った例は他にもある。2014年9 月、ソフトバンクモバイルは、シャープ製のスマートフォン「AQUOS CRYSTAL」の世界観に触れることができる楽しい体験型広告を同じ場所で実施している。光り輝くクリスタルが降り注ぐ映像が流れているデジタルサイネージに近づくと、キネクトが人を感知し、浮遊するクリスタルが音を立てながら集まり、自分のシルエットを形作るというものだ。激しい動きをしても、クリスタルが像を結び、まるで自分のアバターができたようだった。小さな子どもが夢中になってそこを離れなかったり、女子高校生が踊ったり、楽しんでいる姿があった。このように、体験価値を生むインタラクティブなプロモーションには、デジタルサイネージとキネクトを組み合わせた展開は有効的だろう。商品の世界観をうまく出す演出に、活用を検討してみてはいかがだろうか。

このコラムは「宣伝会議」2015年3月号からの転載です。