Our Topicsコロナ禍でも参考にしたいOOH 広告事例第12回「東京屋外広告コンクール」を振り返る

受賞作品の潮流その1
「見た目のインパクトが大きいもの」

隔年で実施している東京屋外広告協会主催の第12回「東京屋外広告コンクール」の受賞作品が発表された。今回は2019年から2020年まで都内に設置、掲出、放映された屋外の広告が対象。受賞作品の中からいくつかを紹介する。
東京都知事賞の第2部門は、アディダスジャパンの「速さは、ひとつじゃない。」が受賞。JR 新宿駅中央通路の壁面、床、天井をオレンジ色に染めたインパクトある空間ジャック型展開だ。
天井には巨大なシューズ、壁にはアスリートの姿やランナーを応援するメッセージが描かれていた。床には「歩行者平均の速さ」「初マラソン完走の速さ」など、速さにより違う「ランナーの歩幅の足跡」が描かれていた。フロア広告の視認環境にも合致し、速さを体感できる上手い表現だった。
東京屋外広告協会会長賞の第2部門は、「フジテレビ「ルパンの娘」盗まれた駅名?」が受賞。泥棒一族の娘が主人公のドラマの駅貼り広告だ。駅名の一部に犯行後の張り紙が貼られ、駅名が消えたような演出になっている。「金沢文庫」は「金」、「東銀座」は「銀」、と駅名の中に含まれる貴金属の名前が対象だ。東銀座では隣の宝町の「宝」も盗まれていた。ピンポイントに駅名を使う着眼点は鋭い。番組の世界観をユーモラスに描いていた。

受賞作品の潮流その2
「人々に親しみや元気を届けるもの」

東京都知事賞第1部門は、日本コカ・コーラの「渋谷ICONICビジョン」が受賞。渋谷のQFRONT屋上に設置された巨大な透過型LEDビジョンで、その背面からLED照明を当てることで立体感のある映像を作り出す画期的なものだ。
発表記者会見時に渋谷区長は「渋谷駅周辺の景色が変わろうとしている中で、最先端のテクノロジーを使い、しかもアートとも混ざっていくようなビジョンができました」と絶賛した。広告主は「閉塞感が漂う状況下で『渋谷コークビジョン』を通じ、驚きとワクワク感を提供するとともに、コカ・コーラならではのさわやかで前向きな気持ちをお届けすることを願っています」と話した。
東京商工会議所会頭賞の第3部門は、スシローグローバルホールディングスの「すしで、笑おう」が受賞。渋谷ハチ公広場前にあるOOHメディアを集中的に使い「うまいすしには、人を笑顔にするチカラがある。そう信じ、こんな状況だからこそ、おすしを届け、皆さんに笑顔になってもらおう」と発信した。公式SNSに公開された媒体の様子を映した動画の総再生回数が110万回を超えるなど、話題にもなった。
以上の2作品は、コロナ禍の象徴とも言える渋谷で、前向きな気持ちや元気を人々に届けるというのは共通している。厳しい状況は続いているが、「突出したブランド力を持つ街渋谷」は健在であることを示し、OOHメディアの関係者も勇気づけられるものがあったと思う。
その他の受賞作品は過去のも含めて東京屋外広告協会のホームページにも掲載されている。参考にしてみてはいかがだろうか。

(参考)
第12回 東京屋外広告コンクール 入賞作品

※このコラムは「宣伝会議」2021年6月号からの転載です。