Our Topicsキャプティブマーケティングの手法を使ったOOHメディア展開
地下鉄のパウダールームの鏡をジャック
1月4日、フジテレビの新ドラマ「コントロール」が、東京メトロの表参道、銀座、池袋の3つの駅の女性用トイレにある「パウダールーム」の鏡を使った広告を実施した。
事件現場で見かける黄色いテープを貼ったようなデザインの中に番組タイトルを掲出。場所もクリエイティブもインパクトある広告だった。このドラマは、犯罪捜査に行動心理学を用いて事件の解決を目指すという内容。そこで広告でも、行動(=人の考え)を映し出す鏡を利用したのだ。
行動心理学の分かりやすい例として、「よく髪の毛をいじる人は欲求不満を抱えている」などがある。今回の広告では、このような人の行動とその解釈の文章を鏡の脇に8種類掲出。鏡の中の自分を見て、思いあたると考えた人もいたかもしれない。
男性が公共のトイレを利用する目的は、「用を足すこと」にほぼ限定されるが、女性はそうとは限らない。以前、やはり表参道で鏡広告を実施したワコールの調査によると、「用をたす以外の行為」として、「メイクを直す」が50.8%、以下「ヘアスタイルを整える」(49.6%)、「ブラジャーのズレを直す」(33.0%)などが挙げられている。
女性にとって「お手洗い」は、自分の容姿の状態をチェックし、身だしなみを整え直す大切な場所になっているのだ。そのためか、トイレの広告というと男性と女性では意見が分かれる。概して男性は汚いというイメージが強くネガティブだが、女性はその点はあまり気にしないようだ。もっとも、一部であるが駅のトイレ自体もリニューアルされ、きれいになっている影響も大きい。今のところ広告的にはオプション扱いだが、定番化する可能性もあるだろう。
羽田空港のトイレでは食品メーカーも出稿
羽田空港の国内線ターミナルの女性用トイレには、「洋式個室」の中に7インチの小型デジタルサイネージがあり、広告活用されている。「レストルームチャンネル」と名付けられたメディアは全部で65カ所、355台ある。座ったときの目線の高さ(約60センチ)に合うように設置されている。
これまでの活用事例の中で驚いたのは、食品メーカー(ドレッシング)の出稿があったことだ。構内の売店などで販売しているお菓子の広告なら理解できるが、ためらう広告主は多いだろう。しかし、慎重に検討の上、試行と調査を行なった。それによると広告視認率が85.8%と高い数値を記録した。気になる印象も「良い」78.7%、「好きでない」0%、「使いたい」68.8%と、ポジティブなスコアが高く出たのは注目に値する。
このように、公共施設の女性用トイレを使った広告は、女性をターゲティングできるOOHメディアとしての可能性がある。狭い空間での広告訴求が有効とする「キャプティブマーケティング」という考え方があるが、これにも当てはまる。実際に見られないのが難点だが、抵抗がある男性も再考してはどうだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2011年2月号からの転載です。