Our Topicsエリアマーケティングの基本 ―渋谷と原宿で狙う若年層―

GREEのペットゲームが渋谷の街をジャック

6月1日~14日の間、渋谷の街が水色に染まった。グリーが運営するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)内で人気のペット育成ゲーム「踊り子クリノッペ」のプロモーションの一環として、同社は渋谷ハチ公前交差点を中心に周辺OOHをジャックした。
JR渋谷駅壁面や東急百貨店壁面などの駅前媒体をはじめ、SHIBUYA109やQ-FRONTなどの周辺商業施設の外壁や看板をジャック、そしてスクランブル交差点に隣接する3つの大型ビジョンも同サービスのCMを放映。さらに光るラッピングバスも複数台走らせるという徹底ぶり。ここまでの大量出稿をもって、渋谷の街はまさしくGREE(グリー)一色となった。今回のこのプロモーションは、もちろんGREE内の同ゲームとも連動しており、期間中にモバイルサイトへアクセスすると、ユーザーに記念のオリジナル待受画像作成機能が提供された。
ジェイアール東日本企画が発表している駅別のデータ特性からも、渋谷駅が他の駅と比較して若年層の利用率が高く、またイメージ的にも「若々しい」「情報感度の高い」など、メインユーザーが20~30代の女性という同サービスに適合する結果が出ている。待ち合わせ場所のメッカとも称されるハチ公前広場から見渡す限りのジャック展開は、居合わせた人々の待ち時間をGREEのモバイルサイト内滞在時間へと変えたことだろう。

西友、原宿で若年層に向けてファストファッションを訴求

一方、渋谷から一駅の原宿駅。若者のファッション最先端の地とされ、昨今は世界のアパレルブランドの出店も相次ぎ、常に脚光を浴びている。さまざまな店舗が所狭しと並ぶ竹下通りへ抜ける出口に、6月初旬、インパクトのあるファッションブランドさながらのポスターが掲出された。「KYファッション発表!」と大々的に書かれたそのポスターは、なんと大手スーパー・西友が「SEIYU FASHION PROJECT」と銘打ち、人気ファッションビル「ラフォーレ原宿」で行うファッションショーの告知だ。
「カッコイイ、安い」をコンセプトに今季からデザイン性の高い衣料品を打ち出した西友は、カジュアルアパレルブランドがひしめき、ファッションへの関心度が高い若年層が集まる原宿でこのような展開をすることで認知度を高める狙い。原宿駅は、渋谷よりも10~20代の若年層の利用率が高く、「流行最先端」のイメージがあることが先に述べた調査でわかっている。近年流行のファストファッションのターゲット層に最適なエリアとも言えるだろう。
OOHの基本ともいえるエリアマーケティングを忠実に実践したような今回の事例。近年は様々なデータも揃い、よりターゲティングもしやすくなってきている。しかしながら、綿密な数字の調査データとともに重要なのは、その地に降り立ち、直接肌で感じる「雰囲気」という基本情報であろう。

※このコラムは「宣伝会議」2009年7月号からの転載です。