Our Topics複数の駅をネットワークで接続 デジタルサイネージの新しい活用法

駅構内では昨年の10倍に 広告主も高い期待

OOHメディアの中で、いま注目を集めているのはなんといってもデジタルサイネージだろう。交通機関では、電車の運行情報を伝えるために以前から設置されていたが、広告メディアとしてもここ数年で、急速に浸透している。ここ2年間だけで見ても、面数比で電車内が4割増、駅構内では約10倍にまで増加している。
電車内では、JR東日本のトレインチャンネルが代表的だが、東急電鉄、東京メトロ、西武鉄道、埼玉高速鉄道、横浜市営地下鉄、しなの鉄道、JR西日本、大阪モノレールなどでも広告放映が可能だ。
今年度に入り、JR東日本では新たに京葉線での運用を開始。東京メトロでも丸ノ内線、東西線の車両で導入が始まっている。その他、徐々にではあるが、多くの鉄道会社が新しく作る車両に車内設備として取り入れている。
駅構内では、JR東日本が牽引役となっており、主要駅に170面以上設置している。中でも、今年3月末、品川駅の自由通路に44面設置されたデジタルサイネージは、通勤ラッシュで多くの人が行き交う通路上という立地条件もあり、高い強制視認性を持つ。ただ、広告は枠数も比較的多いため、現状では常に満稿というわけではない。

生活動線上で効果的に訴求 デジタル技術を使った効果測定も

駅構内のデジタルサイネージで、広告集稿面で話題なのが、発売後1週間で13週分の枠が完売した「駅デジタルサイネージネットワーク」である。首都圏の鉄道会社11社の20駅27面に設置され、駅で注目されるコンテンツなどを検証する実験メディアだ。フェーズ(13週)ごとに販売を行なっているが、第二のフェーズでは、枠数を増やしたこともあり、発売一週間比で、第一フェーズをさらに上回る販売を記録した。
なぜこんなにも人気が出たのか? まず、そもそも広告主企業が、デジタルサイネージに対して、次世代のOOHメディアとして強い期待と関心を持っているという点がある。
次に、鉄道会社の枠を超えて、最も広告需要のある駅を初めてネットワークでつないだ商品であるという点も大きい。横型の画面で、一部では音も出せるため、ターゲットの生活動線上の、より購買地点に近いところテレビCMを放映できることも重要なポイントとなっている。画面が目の高さにあるため、視認性が高いというメリットもある。
また、実証実験ということもあり、通常よりも低めの広告価格設定(一枠・15秒・50万円)としている点も魅力だ。そのため広告主企業の意思決定のスピードも速かった。
さらに今回の目玉と言えるのが、顔認識のカメラの付いた効果測定システムだ。このシステムでは、広告放映時にディスプレイの前を通過した人数、その中で広告を視認した人数や属性等の測定結果を報告できる。
ただし人の往来の激しい中、カメラが認識できる測定範囲は約5mまでといった装置の限界や誤認・システム上のトラブルが起こる可能性など、課題もある。しかし、この装置の採用は、業界にとっても画期的なことである。課題を見つけ解決策を模索するのが実証実験たる所以であり、今後の結果に注目したい。

※このコラムは「宣伝会議」2010年8月号からの転載です。