Our Topics街の景観美と広告の良い関係 バス停広告の可能性

景観を損なわない広告展開 普及するバス停広告

街の景観を意識し、美化に努めることは、屋外広告事業を行う企業にとって重要な責務である。フランスが発祥の地と言われている街の景観ビジネスにおいて、日本でも新たな取り組みが広がってきている。2006年に横浜市が全国に先駆けて導入した「バス停広告」は、08年には全国の各主要都市にも広がりを見せた。
世界各地で展開されているこのバス停広告、ニューヨークのマンハッタン中心部に所狭しと置かれている様子は、外国映画でもよく映し出される光景だ。しかしながら、日本でいま現在の数に普及するまでには、相当な時間とステップが必要だったようである。
日本の場合、公道スペースのため各自治体の許可を得た上で、街の景観に即したものを設置するように配慮されている。横浜市では導入段階の意向として、バス停留所上屋の広告面に掛かる固定資産税や道路占有料を市の収入にするほか、いままで市の経費となっていたバス停自体の製作費や維持費が節約されることが見込まれている。
昨年からは東京都交通局も導入を開始し、デザインは首都大学東京に研究を依頼した。「都会の風が緑の木陰を吹き抜けるイメージで、薄いアーチ屋根や、柱と屋根の接合部にモザイク(格子状の模様)を使うなど、景観に圧迫感を与えないこと」を目指したという。07年度から導入が開始されたが、3年間で100基ほど設置される予定とのこと。
屋外広告物条例に従い、広告面に掲出されるクライアントやデザインも選定されており、各地方の規制に基づいて景観を損なうことのないよう配慮されている。

地域特性や用途に合わせた表現で企業の姿勢をアピール

その一方で、海外ではユニークなバス停広告も話題になっている。屋外の空間を利用してインパクトのある広告を多数展開しているイケアは、06年の「ニューヨーク・デザインウィーク」において、リビングの一角を模したバス停を設置した。景観との調和という点を考慮すれば、なかなか難しい試みだったが、「毎日を素晴らしく(everydayfabulous)」というコンセプトのもと、デザインの力で人々に、驚きと企業の姿勢を強くアピールした好例とも言えるだろう。また、ドバイではエアコンの設置されたボックス型のバス停、映画『スター・ウォーズ』の公開時には、劇中に登場する武器「ライトセイバー」を模した光る柱で作られたバス停など、地域の特性や用途に合わせたものも登場している。
屋外広告物は各地によっても規定が異なる複雑な媒体。しかし、逆手に取れば街の美化を促し、自治体の新しい収益源になる可能性も秘めていると言える。ただし日本の都心部では、道路の敷地面積が海外に比べて少ないため、停留所上屋自体の設置も物理的にハードルが高そうだ。さまざまな難題を潜り抜け、今後、需要が伸びていくのか、期待が高まる。
<東京都内に設置されている、都営バスのバス停広告。バスを待つ人々からも、通行する人々からも目に付くよう、内外の両壁面が広告掲出スペースになっている>

※このコラムは「宣伝会議」2009年2月号からの転載です。