Our Topics可視化した情報が実感しやすい場所で サイネージを活用する

風を感じる駅のホームで花粉情報を訴求

2016年3月14日から1週間、ヤフーは都営大江戸線六本木駅のデジタルサイネージを使って自社サービス上で提供するコンテンツをほぼリアルタイムに放映する実証実験を行った。中でも「リアルタイム・ハクション・サイネージ」という4面のサイネージを使った展開はユニークで楽しいものだった。モデルの川口カノンさんとお笑いタレントの芋洗坂係長さんが、桜の花びらが落ちている中で踊っている映像が流れている。画面には隅田公園や六本木ヒルズなどのお花見スポットの「Yahoo!地図の桜の開花情報」も表示してある。そこに電車がホームに進入すると、あたかもその風に呼応するかのように画面の中で猛烈な風が吹いて、花びらや帽子が吹き飛び花粉が舞い、二人は大きなクシャミを連発した。その後何とも情けない顔のまま画面が止まった(写真1)。開花情報の表示も「開花より花粉が気になるあなたに。」と変わり、「Yahoo!天気・災害の花粉情報」になるという仕掛けだった。芋洗坂係長さんの映像を見ていた外国人グループたちは、くしゃみをした瞬間のオーバーアクションと表情に大爆笑となり、大ウケだった。川口さんもモデルとは思えない変顔をするその落差に笑えた。制作者によると、この二人を採用した理由は、「迫力あるくしゃみのリアクションと変顔が最高によかったから。六本木駅のサイネージは音が出ないので、映像のインパクトが重要だと思った」とのこと。その思いは届いていると言えそうだ。電車の到着メロディの周波数パターンをセンサーで読み取り、風が吹く映像のタイミングを合わせていたそうだが、それにヤフーのリアルタイム情報を重ねるという二重のデジタルテクノロジーを駆使している点が画期的だ。今回の試みでは、同駅の他のサイネージに「Yahoo!映画」のTOHOシネマズ六本木ヒルズの上映スケジュールや、「Yahoo!リアルタイム検索」のランキングコンテンツ「話題のツイート」なども表示されていた。注目度の高いWebコンテンツの活用は、Webにつなげる配信システムなど技術的な条件が必要で簡単では無いが、3月から「話題のツイート」の配信を京王電鉄井の頭線吉祥寺駅のサイネージで実施するなど広がりを見せている。

紫外線を感じる屋外で紫外線情報を訴求

2016年4月18日からパナソニックは、紫外線対策用のモードを備えた導入美容器「イオンエフェクター」のプロモーションでデジタルサイネージを使った。この商品は紫外線対策に適した化粧品に含まれるビタミンCを角質層まで届ける機能を搭載している。電車や駅のサイネージでも行ったが、渋谷ハチ公交差点のQ’SEYEや新宿のアルタビジョンでは、30分おきに「弱い」「やや強い」「強い」などの紫外線量予報「紫外線ニュース」を30秒放映した後、CMが流されるというものだった。紫外線量が強くなるにつれ、イメージキャラクターの水原希子さんの表情が困ったようになるのは、うまい表現だなと感じた。商品の機能価値と結びつくその日の気象情報を、指数という形で可視化して見せる手法は、人々の関心を呼びやすく購買喚起につながる優れたやり方だ。その中でも特に、このように風を感じる駅や、紫外線を感じる屋外にあるデジタルサイネージを使っての訴求は、可視化した情報が実感しやすくより効果的だろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2016年6月号からの転載です。