Our Topics優れた人間のアート技能を活用したOOHメディア展開

巨大な折り紙で競走馬と騎手を作成

2016年11月21日から1週間、JRAは京王線新宿駅のイベントスペースでジャパンカップを記念した「折り紙サラブレッド」の展示を実施した。競走馬に騎手が乗っている姿で等身大に近い大きさがあった。驚いたのはそれぞれが1枚の紙で折られているということだった。作者は折り紙アーティストの宮本眞理子さん。デジタルサイネージでは、メイキング映像をタイムラプス動画のように時間を凝縮して放映していた。数名のスタッフと足一本にしてもそれぞれの向きやふくらみを出すのに気を配る姿が見られた。実際の制作には18時間42分51秒かかったとのこと。見た人は驚き感動していたが、世界の競走馬が集まって行うレースを折り紙という日本由来の優れたアートでおもてなすといった意味もあるように思えた。外国人にはより響くものだったに違いない。

赤鉛筆アートで番組情報を訴求

2016年10月1日から4日間、日本テレビはJR品川駅のイベントスペースでドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」のプロモーションを行った。「地味にスゴイ!番宣」とした内容は、番組タイトルや出演者名などの番組情報を、赤鉛筆の芯に一文字ずつ立体的に彫刻したものの展示だった。
主人公が校閲者でその仕事道具が赤鉛筆であるところからきているようだが斬新で見事な発想だろう。作者は日本で唯一という鉛筆彫刻家の山崎利幸さん。制作時間は1文字あたり3時間、総制作時間は312時間にもなったという。このアートに対する出演者の反応や、メイキング動画もWebサイトにアップされていた。

マスキング丸シールアートでタレントの肖像画を描く

2016年8月29日から1週間、富士フイルムは丸の内線新宿駅の大型ボードで高畑充希さんの巨大肖像画を掲出した。この制作にはマスキングテープと同じ素材の小さな丸シールを使った。作者はイラストレーターの北村佳奈さん。使った丸シールは驚くことに13万枚以上、実に322時間もかけて仕上げたそうだ。様々な色の丸シールが重なり合ってカラフルで、何より高畑さんがそっくりでとても美しかった。アスタリフトのイメージキャラクターに新たに起用されたことを紹介するとともに、アート作品として展開することで、女性の目に留めることが狙いだったようだが、多くの通行者が立ち止まりスマホで撮影をしており成功したと言えるだろう。丸い小さなシールは、アスタリフトのナノ成分もイメージしている。その後メイキング映像をウェブムービーとして公開していた。
このように優れた人間の職人芸的な特殊アート技能を使った広告展開は、デジタルな時代だからこそ注目を集めやすい。どれもが人間の手によって多くの時間をかけて作られた手作りの1点ものであるが故の希少価値もある。それらの表現の場としてOOHメディアは最もふさわしいと言えるだろう。一例として取り上げた「折り紙アート」、「マスキング丸シールアート」、「赤鉛筆アート」以外にも「黒板アート」などが実施されているが、まだ他にもある。ブランドの世界観に合ったアート技法の活用を検討してみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2017年3月号からの転載です。