Our Topics消費者を引き付ける施策 パブリシティの成功2事例

ポスターから消えた主役 視聴者に目撃情報募る

9月下旬、東京・渋谷のハチ公広場に面した東急百貨店の壁面に、テレビアニメ「スティッチ!~いたずらエイリアンの大冒険~」(テレビ朝日系列)の広告が掲出された。10月13日の放送開始を告知するものだ。
ところが掲示から数日後、ポスターから主役である「スティッチ」の姿が消えてしまう。
実は、これがプロモーションの始まり。ポスターから逃げ出したスティッチが東京各所を巡り、放送開始日までに六本木のテレビ朝日社屋にたどり着くまでを公式WEBサイトでレポートする企画なのだ。
サイトでは、視聴者から目撃情報を募り、カメラ付き携帯電話などで撮った写真を公開していたが、個々の目撃者が自分のブログに情報を掲載するなどバイラル効果も生まれていた。
逃走中のスティッチを模した巨大な人形が設置されたのは、目黒、舞浜、秋葉原ほか。人形は、JR山手線の社内から見える目黒のビル屋上に置かれるなどした。

ニュースなOOH 成功すればROIも高い

一方、東京駅では村上春樹氏の長編小説『1Q84』のポスターが掲出され、話題を呼んだ。
『1Q84』は、既刊の2冊合計で220万部を超えるベストセラーだ。発売当初は品切れが続くなど、近来まれにみるヒットとなった。
話題となったのは、ポスターに並んだ、3つの「Q」の文字。1巻、2巻の表紙には、それぞれ緑とオレンジの「Q」の文字が描かれているが、ポスターにはもうひとつ、青い「Q」の文字があったのだ。
掲出時はテレビやインターネットのニュースで「続編の存在を示唆しているのではないか?」と取り上げられ、さらに出版元の新潮社が「広告を見た方のご想像にお任せします」とコメントしたことで、報道が過熱した。
第3巻については実はポスター掲出前のインタビューで、村上春樹氏本人が来夏に向けて執筆中であることを明らかにしている。
「パブリシティ効果」は、OOHに求められる要素のひとつである。今回紹介した二つの事例には、扱ったコンテンツ自体に話題の起点となる力が備わっていたため、周囲を巻き込んだ展開ができたのだ。
しかし通常は、OOHに話題性を持たせることは容易ではない。そのうえ周到に準備をしても、結果がどうなるのか、コントロールしきれない場合が多い。
ただその難しさを差し引いても、多くの人がブログなどのパーソナルメディアを所有し、その人自身がメディアと化しているいま、人々をひきつけるプロモーションをプランニングできれば、費用対効果の高い施策になるはずだ。

※このコラムは「宣伝会議」2009年11月号からの転載です。