Our Topics震災後ならではの活用法も登場 デジタルサイネージの最新事例 
生活者もサイネージに注目 広告ニーズの高まりに期待
6月8日から10日にかけて、デジタルサイネージに関連する製品や企業の取り組みなどを紹介する「デジタルサイネージジャパン2011」が千葉の幕張メッセで開かれ、多くの来場者で賑わった。
高輝度の大型マルチディスプレイ、バーチャルコーディネイト、AR、3D、ツイッター連動、iPad連動、携帯連動のサンプル配布、男性トイレ専用サイネージなど、OOHメディアとしても様々な活用法を紹介する出展社が集まった。また、太陽電池パネルや蓄電池で動くサイネージや、災害救援ベンダーなども出展していた。これらは震災後の節電を意識した、今年らしい展開だったと言えるだろう。
「災害時対応と節電対策」と題したパネルディスカッションも行なわれ、デジタルサイネージは社会に対して貢献できる存在にならなければならない、ということもその場で再確認された。
サーベイリサーチセンターと災害と情報研究会は、震災時に外出していた人に「今後このような状況時にどんな情報入手手段がよいか」を調査した。その結果、「テレビやラジオによる情報提供」 ( 78.1%)、「携帯電話」 ( 70.1%)に次いで、「コンビニや店舗にある液晶モニター(電子広告板)」( 46.2%)が入った。さらに「パソコン」( 42.9%)を挟んで、「駅や屋外のビッグビジョン」( 42.3%)が5位に入った。コンビニのサイネージや街頭ビジョンへの情報ニーズが高いことが示された点は、注目に値する。今後、このようなメディアを使った広告へのニーズも高まるに違いない。
筆者がモデレーターを行ったセッションでは、鉄道系デジタルサイネージの広告ニーズが高いことが示された。JR東日本のトレインチャンネルの広告収入が、昨年度約50億円もあったことや、鉄道広告運営各社がさらにメディアとして拡大する意向があることが明らかにされた。
オフィス内での導入事例も 社員の情報共有に活用
「デジタルサイネージアワード2011」では、NTT東日本 東京支店の「東京サイネージ」が最高賞に選ばれた。社内に90カ所400台設置して、1万人の社員が情報共有する大規模なオフィス内のサイネージだ。このような「イントラの見える化」を狙った試みは、今後企業内で増えてくる可能性がある。デジタルサイネージコンソーシアムの中村伊知哉理事長も、「ネットワークメディアとして成熟してきて、いろんな場面で役に立つメディアになってきたと実感している」とコメントした。
デジタルサイネージは広告以外の領域も拡大している。しかし、リーチを獲得できる大規模なものや、逆に細かく絞り込んだターゲティングができるものは、たとえ広告の入り込む余地のない「聖域」であっても、慎重な方法によってメディア化の可能性を考えることは、広告業界の者にとって今、必要なことではないだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2011年7月号からの転載です。