Our Topics嗅覚、味覚にまで訴える、00Hメディア展開

駅広告スペースで、本物のカップ焼そばを食べさせる

2月27日、日清食品は、東京メトロ新宿駅で、焼そばU.F.O.を期間限定で食べて頂く広告展開を行った。「ヤキソBAR U.F.O.」と名付けられたブースは、テレビCMで俳優の椎名桔平さんがマスター役を演じた幻の店の世界観を再現したものだ。新CMの記者発表会もこの場所で行われた。ここでは、新しくなったU.F.O.を実際にその場で作り、二百円で提供。「ケトルキープ」というCMに登場するやかんをキープする楽しい企画も実施した。
新宿西口側から向かうと、良い香りがして来る。おいしそうな香りのアテンション効果は強力で、思わずその発生場所を確かめたくなった。その先には、人々が集まっているので、自然とそこへ誘導された。通りを行く人々の注目度合は凄まじく、「なにこれー!」「ああテレビのコマーシャルでやっていた」などの声が聞こえた。この様子をケータイやスマホで撮影する人が続出し、夕方の時間は途切れることがなかった。5席しかなかったので、食べるのにも行列が出来、40分待ちの表示を掲げた時もあった。関係者によると、7日間で1,700食以上を販売したという。

「AIDMA」「AISAS」「SIPS」すべてが見られた

この広告展開で注目したのは、人々の購買プロセスだ。まず「香り」に注意(A)を喚起され、ブースに興味(I)を持ち、食べたくなって(D)その場で食べた(A)という人達がいただろう。その場では食べなかったが、これをきっかけに記憶(M)してコンビニで購入した者も知り合いでいた。ソーシャルメディア上では、共有や拡散(S)は多く行われた。私自身もフェイスブックで書いたところ、いいね!としてくれる人が多くいた。一方、家なら3分で食べられるのに待つ?という人もいた。確かに客観的に見れば、合理的でないかもしれない。しかし、その場で食べた人が、1,700人以上いたことは、人々が合理性だけで行動しないことがわかる。そこにあるのは、プロモーションに対する共感(S)ではないだろうか。初めて見た、おもしろい、ここしか、今しかやっていない、いい香りのする新商品などに共感して並んだのだろう。皆イベントに参加する(P)意識で、楽しんでいたようだ。
また、購買層は若いイメージがあったが、意外に参加者層は幅広かった。広告業界で有名な行動プロセスに当てはめてみたが、違っていたらご容赦願いたい。ただ、テレビメディアと連動してコミュニケーションデザインがされ、OOHメディアが話題の起点となる使われ方になった点は確かだ。実施面では、駅構内では保健所の許可を取るのが難しいなど課題もあるが、食品メーカーの方は、検討してみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2012年4月号からの転載です。