Our Topics受験生のインサイトを突く
合格祈願を自分ごと化
大学入試センター試験直前の1月13日から1週間、P&Gは、「ファブリーズ 受験生応援キャンペーン」でOOHメディアを使った。地下鉄丸ノ内線新宿駅には、松岡修造さんの「自分を信じろ!君ならできる!」というメッセージが書かれた高さ約2m、左右14mもの大型ポスターを掲出。同時に、松岡さんの「自分を信じろ!君なら出来る!!You can do it!!」など、30種類の熱い声のメッセージも流した。注目は、ファブリーズオリジナル絵馬に「合格祈願」のメッセージを通行者に書いてもらい、ポスターに貼りつけられるようにしたOOH独自の展開だ。メッセージの書かれた絵馬は、後日学業成就の神社にてお焚き上げをするという本格的なものだ。書いた名を見ると、受験生本人だけでなく両親、兄弟、友達、後輩、先生などもいて幅広い。受験生に関わるまわりの多くの人が暖かいメッセージを送っていた。「合格祈願」といっても、中学、高校、大学の入試だけでなく、医師国家試験、建築士、保育士、ヨガの資格、ファイナンシャルプランナー、ウエブデザイン技能検定、ドイツ語技能検定、大学生の単位取得、卒業試験、校長試験、会社の採用試験 など対象は実に広範囲に渡っていた。「合格祈願」というキーワードに共感した多くの通行人が「自分ごと化」しメッセージを書いたと言えるのではないだろうか。受験生応援のプロモーションはキットカットに代表されるように「きっと勝つと、受かる、落ちない、突破する、吉報」などの言葉にかけたものが有名だが、ウィルスを除去して受験のラストスパートを応援するというファブリーズの例は斬新だろう。
受験生の心配事1位に対応
ファブリーズは、中づり広告も実施していたが、電車内には受験生に向けたOOH広告が3社あった。ライオン、大幸薬品、興和だ。共通しているのは「下痢止め薬」。ライオンはストッパで「下痢に即効!溶ける。効く。」という通常の表現に「受験にも」としていた。大幸薬品は正露丸で、「おなかの問題も、しっかり対策。受験生のおなかのお守り」、興和は、トメダインコーワフィルムで「受験当日、急な下痢に負けるな!お腹のピンチに!勝負の日!試験当日の急な下痢にこの1枚!」としている。ライオンの調査によると大学受験生の一番の心配事1位は「急な下痢(腹痛、トイレ)35.6%」だという。特に緊張が高まっている試験当日、会場に向かう動線上での訴求は、刺さる広告となるに違いない。
このように、受験シーズンでのOOHメディア展開は、不安な受験生のインサイトを突く表現にすれば、その需要を取り込む有効な広告手段となるだろう。訴求ターゲットも受験生だけでなく、家族をはじめ周辺にも及ぶ。合格祈願という切り口なら、対象も大学受験以外の広範囲に狙えることがわかった。参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2014.3月号からの転載です。