Our Topicsリアルなもので想起させる

カーテンで試着室を再現

3月3日から1週間、ワコールは「女神のヒミツ ビーナスフィットブラ」のプロモーションでOOH メディアを使った。丸ノ内線の新宿駅にある高さ約2m、左右14m の大型ボードには、等身大のモデルの中村アンさんの姿が3ポーズ見える。テレビCMの世界観さながら、試着室から出た瞬間を表現しているようだ。「こんなつけごごち、初めて!」とふきだしでせりふも伝えている。カーテンは本物の布地を使いリアルな感じを出しているが、CM のものとは違い長さは少し短い。よく見ると、カーテンの下から足だけが見えている場所が3カ所あった。通行者がそのカーテンをめくると、別なポーズの中村さんが見えた。男性には勇気がいるが、同行してもらった女性はめくりたくなると言う。わざと足だけを見せて、誘導するうまい仕掛けだ。一方、「その驚きは、試着室で」と書かれた脇には、「試着室はこちら。」と最寄りの百貨店等の店舗名が7カ所、方向を示す矢印とともに書かれてあり、来店を促していた点もOOH らしい表現だ。 ワコールは、店舗に心とからだにフィットする下着選びのお手伝いをするビューティーアドバイザーがいるくらい、サイズ選びの重要性を訴えている。試着室はそれが行われる重要な現場だ。試着アンケートでは、つけごごち(触感)は100%の人がよかったと答え、カップのフィット感は98%の人がよかったとしている。さらに、90%の人が胸の谷間ができたなど、試着は購入の決め手にもなるに違いない。その訴求ポイントをカーテンで再現し想起させるのは、上手いOOH の使い方だろう。

本物の人間も使って人生を表現

ワコールと同じ場所で、アイリックコーポレーションは、昨年11月末に来店型保険ショップ『保険クリニック』15周年を記念して、ユニークなプロモーションを行った。「人生の喜怒哀楽には保険の見直しを」をテーマにマネキンによる人生のショートストーリーを再現したのである。全部で4つのシーンがあった。背景の大型ボードにテレビや本棚や窓、時計を描き、本物のソファーや机を設置し家の中を表現。男女のマネキンが寄り添っているところには、「赤ちゃんの心音を聞いています&hellipマネキンたちを、そっと見守りください」という解説のプレートがあった(おめでただとわかる)。その他、「ただいま修羅場真っ最中&hellip」(三角関係か?)だったり、「残念ですがお別れです&hellip」と奥さんと子供が出て行くシーン(離婚か?)や「ランドセル試着中&hellipマネキン家族の団欒を見守りください」と5人家族でランドセルをつけた女の子が楽しそうな笑顔でいるものがあった。(小学校入学!)それぞれのシーン専用に作られたとしか思えないマネキンを使って人生の節目を想起させるうまい演出で、それと保険の見直しを結びつけている。日時限定だったが、そこに本物の人間がパントマイムパフォーマーとして入り、人だかりができるサプライズもあった。このように、カーテンやマネキンなどリアルなもので商品の訴求ポイントを想起させる手法はOOH ならではと言えるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2014年5月号からの転載です。