Our Topicsアナログで機能価値が逆に新鮮

香りのヴェールを本物の布で表現

ライオンは、「香りとデオドラントのソフランアロマリッチ」のリニューアルプロモーションで、2014年10 月、東京メトロの中づり貸切電車を使った。テレビC Mなどで放映されている柴咲コウさんがアロマのヴェールに包まれる様子を、驚くことに本物の布で表現したのである。上品な透け感と程よい張り感を持った薄手の生地が世界観をうまく伝え、あたかも香りが漂っているかのような演出に「いい香りがする」と錯覚したほどだった。サプライズな仕掛けに触って確かめている人も多く見られた(山手線ほか全国でも実施)。ライオンによると、近年、高残香タイプの柔軟剤が伸張しているが、その使用者は、「柔軟性」「香りのよさ」に次いで、「香りの持続性」を重視しているとのことだ。新配合の成分が衣類に付着し、香りを少しずつ放出。ほどよい強さの香りが一日中長続きする機能価値を若い層、特に自分を魅力的に見せたい20 代女性に伝えるのが狙いだ。同時に、チャレンジしているブランドだと訴えたかったそうだが、ツイッターに「斬新!攻めているね」などの書き込みも見られ、狙いは届いていたようだ。

好きな香りを持って帰れる仕掛け

一方、2013年4 月、花王は同じタイプの柔軟剤「フレア フレグランス」の広告で、実際の香りを伝えるO O H の展開を実施している。東京メトロ新宿駅の大型ボードに香りのついたボトル型カード(表面をこすると柔軟剤の香りがする)を貼り付け、それを自由に持って帰れるようにした「ピールオフ広告」と呼ばれるものだ。天井や床も散りばめられた花びらで駅空間をジャックするなど、こちらも香りの世界観をうまく演出していた。

白さを直感的に伝える

ライオンは、アロマリッチ同様に斬新なO O H 展開を2013年3~4 月、「トップN A N O X」の広告で実施している。東京メトロの広告貸切電車で、ブランドの機能価値である「ナノレベルの白さを実現すること」をより直感的に理解してもらうように、車内全体を「白」の世界観で演出した。白さの際立った実物のタオルやシャツを中づりがある場所に洗濯物のように吊し、紙のポスターも最も白いものを選び使用した。しかも、文字要素を最小限に抑え、できる限り白の印象が増えるようレイアウトにも工夫をしたという。実物の訴求効果は抜群で、生地を触ったり写真を撮ったりする乗客が続出した。ツイッターに「す!すごいな!ナノックスの車内広告!真っ白なシャツが干してあるよ!」など1日20~30 件の投稿があるなど、情報の拡散も多く見られた。ライオンの担当者は、O O H メディアをテレビの視聴時間が減少する中、テレビで届かない層にも訴求できる効果的メディアと考えている。通勤者なら行き帰りを含め複数回接触することも可能で、最近ではデジタル化も進み、動画を流せるところも拡大している。今後も重要なメディアとして活用を検討していきたいそうだ。デジタル化が進む一方、このようにブランドの機能価値や世界観を直感的に訴求するには、アイデア次第でアナログな展開も有効だろう。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2015年1月号からの転載です。