Our Topicsゲームの世界観をリアルに置き換えた体験型プロモーション

レゴブロックを貼りつけ『ドラクエ』モンスターを描く

1月25日から1週間、スクウェア・エニックスは、新商品「ドラゴンクエストビルダーズ」のプロモーションでOOHメディアを使った。東京メトロ新宿駅では、大型ボード4面と柱を使った大展開だった。中でもボード2面に「レゴブロック」を貼りつけて、ゲームに登場するモンスターたちを色鮮やかに描いたのは秀逸だった。のべ100名のスタッフが4日間32時間もかけて作成したそうだが、約18万個のブロックによって描かれたものは、「このゲームの世界は無数のブロックで構成されている」という、その世界観を再現しており、昔からのファンには懐かしい「ドット絵」を連想させる優れた着想の作品と言えるだろう。28日の午前7時からは、このブロックを抜き取るという「新宿ブロックモンスター討伐戦」が開始された。通行者にこのブロックを1本1本抜き取ってもらう作戦だ。ブロックを取るとモンスターが消え「討伐」ということになる。ゲーム上では、登場するモンスターを爽快なアクションで倒すことが何よりおもしろいところだが、それをリアルな体験に置き換えている。これがゲームファンの心を見事に捉えた。実際に現場に行かないとわからないことだが、とにかく参加者の熱量が高い。関係者によると、地下通路のシャッターが開く6時にはすでに参加者が待っていたそうだ。当初参加者があまりに多いので、順番待ちにして5分交代で実施したくらいだという。驚くことに、たった3時間半で18万個のブロックが全て取り外され、「討伐」となったのである。ブロックが取られた後には、平和なアレフガルドの絵があらわれるというしかけだ。非常に手の込んだピールオフ広告とも言える。ゲームさながらに仲間とパーティを組んで来た者がいたり、やり遂げるまで帰ろうとしない者が続出していた。その結果が、つくる時間の約10分の一での討伐につながっている。終了時にはカウントダウンと共に拍手が沸き起こり、実施者は笑顔で達成感を味わっていた。ヤフーニュースなど多くのメディアに掲載されたほか、Twitterでも「新宿駅構内に突然現れたブロック塀!気になりますね、これ」「いざ!“討伐”へ 新宿駅にモンスター大量発生! 」などと話題になっていた。

昨年は10万匹のスライムを潰す

話題のプロモーションは同じ場所で昨年2月にも行われている。その時は約10万匹の人気モンスター「スライム」を大型ボードに配した広告を実施している。このスライムは気泡緩衝材で出来ており、これを指で潰して「討伐」してもらおうというものだった。この時も、膨大なスライムはわずか一日半で討伐された。現場の様子はスマホで撮影され初日に9000以上ツイートされ「10万匹スライム出現」がソーシャルメディアの急上昇ワードにもなったそうだ。このように、ゲームファンを熱く燃えさせる企画は話題にもなり、情報拡散の度合いも高い。ゲームの世界観をどうリアルな体験型広告につなげるか難しい部分もあるが、参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2016年4月号からの転載です。