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2020年に向けたデジタルサイネージの市場予測

6月15日「デジタルサイネージ2020」という書籍が発行された。執筆したのは一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム内にあるマーケティング・ラボ部会である。この組織は、デジタルサイネージビジネスの実例をマーケティング視点から調査・分析し、そのあるべき姿をコンソーシアム内外にフィードバックすることを目的に設立されたものだ。ちなみに筆者はその幹事を務めている。
デジタルサイネージの基本から、実践、近未来の市場展望までがわかる本だ。豊富な事例が掲載されている他、巻末には90の専門用語を解説した用語集もあり、初学者でも理解しやすい作りとなっている。6月8日~10日に行われたデジタルサイネージジャパンでは、会場内で先行発売され、なんと500冊が3日間で完売した。Amazonでも一時ベスト10にランク入りするなど業界関係者に注目の本となっている。
読者対象がサイネージ事業者全般なのでシステムなどの技術的なこと、ビジネスモデルの構造、サイネージを導入する場合の留意点・手順などの解説もある。最近、広告会社が独自にサイネージメディアを開発・設置・運用する例が出て来ているが、同様のことを検討するには参考になるだろう。あるいは、自治体や流通系の企業などでサイネージを設置して活用しようとする動きも増えているので、広告関係者でもビジネスチャンスとなるかもしれない。デジタルサイネージの提案・検証・改善するときに参考になるノウハウを書いた本は、おそらく他には無いだろうから貴重な存在と言えよう
デジタルサイネージの利用目的は大きく「広告」「販売促進」「情報提供」「エンターテインメント」に分類している。広告分野に関係する記述をピックアップする。

  • 法規制。設置し放映するのに順守しなければならない屋外広告物条例や景観条例やさらに街独自の地域ルールがあることを記載。
  • モバイルとの連携。その現状と解決課題、今後の進化展開を解説。
  • プロジェクションマッピングやライブビューイング。それらで活用されるARやVR・ホログラフィック他新しい映像技術の可能性。
  • ADプラットフォーム。インターネット広告からきた経済分野でのエコシステム。代表的2社へのインタビューによるその現状と可能性を解説。
  • 海外事例:ニューヨークの「LinkNYC」。マンハッタンの歩道上に設置された街角サイネージを現地取材。

需要が高まる 交通機関サイネージ

本書がサイネージのメーカーや事業運営者だけでなく広告関係者にも注目を集めている背景には、サイネージに対する広告需要の伸びが高いということが考えられる。業界関係者の話によると首都圏の鉄道広告では、昨年度電車内のサイネージは13%強、駅は23%強も伸びており、これは、キャッチーな言い方をすれば日本の広告費2015にあるインターネット広告費の伸び率10.2%をも上回る数字だ。もっとも集計時期や方法が違うので比較はできないが伸びているのは事実だ。
本文中では2020年へ向けての市場予想についても言及しているが、今後の市場の鍵を握るのは広告・コンテンツ関連市場(販促含む)だ。「ネットワーク化の進展により、広告アグリゲーター等の参入や、インターネット広告から派生した行動ターゲティング広告などがデジタルサイネージ上でも展開される等、スマートフォンとの連携が可能なOOH広告市場が今後拡大し、デジタルサイネージはその重要なメディアとして役割を担う」としている。
このように、広告業界関係者にも役に立つ「デジタルサイネージ2020」参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2016年9月号からの転載です。