Our Topicsゲーム会社が広げるOOHメディアの可能性
地下通路全体をゲームの世界観で包んだ
Cygamesは、同社が開発しバンダイナムコエンターテインメントが配信・運営するリズムゲームのアプリ「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(略称デレステ)のプロモーションで画期的なOOH展開を行った。2016年9月に行ったものは配信1周年を記念したもので、全長約80mの東京メトロ新宿駅地下通路全体をデレステの世界観で包み込むというものだった。アニメタッチのアイドルキャラクター155人全員が集合した巨大イラストポスターや、ほぼ等身大のアイドルたちが30本の柱に2名ずつ60名が並んでおりその姿は圧巻だった。フロア広告ではお城に続くレッドカーペットを再現 。天井のバナー広告は立体的なエアビルダーを使った。さらに「デレステ」オリジナル楽曲のユニットが、日替わりで等身大書き割りパネルで登場するなど、ファンにはたまらなく魅力的な内容となっていた。
驚いたのはデジタルサイネージの使い方だ。1面は、高さ1mで横がなんと10mもの巨大LEDサイネージだった。画面は高精細で色も鮮やかで見やすい。デフォルメされたキャラクター「ぷちデレラ」が大勢、画面右側から左側にゆっくり行進をしている映像が放映してあったが、時折ダンスや会話をしているなどキャラクター毎に実に動きが細かく設定されていた。ここだけのために制作されたユニークな映像を多くの者が立ち止まり見ていた。
さらに、高さ2m横が3.5mのLEDサイネージも2カ所に設置されていた。ここでは、ゲームのアイドルユニットが歌うシーンを何曲も放映していた。もちろんミュージックビデオなので音声も聴くことが出来た。「普段スマートフォンの中のサイズで見ているアイドルたちを、等身大サイズで手の届く距離で見ている」といった体験に感動した者が続出、多くの者がその場を離れず、曲が終了するたびに拍手が起きていた。ペンライト等を振らないで下さいと表示してあったが、まさにライブ会場さながらだった。
「デレステシンデレラガールズが新宿駅地下道をジャック!」「新宿地下ジャックの神々しさよ&hellip」「圧倒的豪華なデレステ広告をフォトレポート! : なんだかおもしろい」など、当然SNSでの反響も凄かったが、中でもキャラクターボイスとして、声や歌を担当する声優さんたちがお忍びで来ていたことも話題になっていた。彼女たちはここに来たことをSNSにアップしていた。「沢山の方々に愛されているようでよかった」「気付いたら1時間45分いました&hellip夢の国かな」などのコメントの確認できた7人のTwitterを見ると合計リツイート数が2万3千を超え、いいねの数は3万以上にまでなっていたほどだ。
このように、ゲーム会社はファンの心をつかむプロモーションを行うのが上手い。ゲームの世界観を忠実に再現するため、細かなところまで神経が行き届いた制作能力は優れたものと言えるだろう。ライブエンターテインメントのような広告としての枠を超えた斬新な発想も見られた。ゲーム会社のクリエイティビティがOOHメディアの可能性を広げたと言えよう。ネット上での情報拡散も多く、日に日に来場者も増えていった。全て同じ事をするのは簡単では無いだろうが、部分的でも参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2016年12月号からの転載です。