Our Topicsたすきをかけて山手線を走った箱根駅伝のOOH広告
山手線の広告貸切電車で「箱根駅伝」の魅力を訴求
2017年12月18日から2018年1月2日まで、日本テレビは、JR山手線の新型車両の広告貸切電車「E235系ADトレイン」を使って「第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」の番組宣伝を行った。
山手線52編成のうち、1編成の車内にある多くの広告媒体を1社独占で使った展開だ。注目したのは中づり部分に大学名の入った「たすき」がかけられていたことだ。左から青山学院大学、東洋大学、早稲田大学とシード校が前回の成績順に、帝京大学からは予選会の通過順に出場20校と関東学生連合チームが並べられていた。たすきの材質は厳密には本物と同じではないようだが、高精度の印刷が可能な厳選した布の素材でリアリティがある。1枚の布に21チーム並んだ状態で印刷し、たすきとたすきの間をレーザーで切り抜いて1本1本作成したとのことだ。駅伝は「たすき」を各区間でつないでいくスポーツだから全チームのたすきを紹介できればというところから生まれたそうだが、実に見事な着想で上手いOOHメディアの使い方だろう。
筆者が箱根駅伝で切ない思いがこみ上げるのは「繰り上げスタート」のシーンだ。特にあと少しで間に合わなかった選手が、倒れ込み号泣する姿には涙が誘われる。選手のたすきをつなごうとする思いの強さに心が打たれる。大げさかもしれないが、たすきには各校の受け継がれてきたDNAのような過去の記憶の詰まった魂のような存在すら感じる。それだけで箱根駅伝を想起する象徴だろう。
Twitter公式アカウントでは「山手線に乗ると、もしかしたらそこは箱根駅伝の世界かもしれません。是非お楽しみください!」と伝えていたが、「この車両に乗ったら降りられない」「ずっと眺めていたい」「知らなくて偶然乗ったのですが気づいたとき一人で興奮して写メ撮ってました(笑)」「一気に熱くなった」などの感動のコメントが寄せられていた。特に「さっき乗った山手線、最初裏から見て何の広告かぜんぜん分からんかったけど振り返ったらめっちゃ興奮した!!!どこにも駅伝なんて書いてないのにこれだけで何か分かるのすごい!!!!!!」といったつぶやきのリツイート数は1万7000、いいねの数は2万6000を超えるほどになっており、ネット上でも話題となっていた。たすきは二つに折り曲げられた状態で吊されており、反対側から見ると文字は無く、色とりどりの帯状のものが21個並んで見えだけなのだが、逆にこれも注目を集めたのである。
ドア横のB3ポスターでは1面につき1校ずつ、例えば青山学院大学は「敵は四連覇の重圧」として出場20校それぞれの背景や目標などの解説文が掲出されていた。網棚付近にある3面のデジタルサイネージ「まど上チャンネル」では、選手の走るシーンを見せながら「出雲駅伝、全日本駅伝で優勝を逃しているが、4連覇の可能性は十分ある」など、各校を順番に紹介していた。豊富な動画コンテンツを持つテレビ局ならではで、デジタルの使い方も上手い。
このようにOOHメディアはアナログもデジタルも同時に訴求できるのが強みだ。アイデア次第では、SNSでの情報拡散の起点ともなれる。参考にしてみてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2018年3月号からの転載です。