Our Topics「ダメだ、墾田永年私財法に目が行く」渋谷に掲出された明治の巨大O O H
受験生から募ったリアルな声
渋谷憲章ボードに掲出
東京都は緊急事態宣言の発令時、各市区・東京消防庁らと連携し、都内の主要駅周辺で新型コロナウイルス感染拡大防止のために外出自粛への協力等の呼びかけを実施した。注目したのは、2月3日に渋谷ハチ公前広場で行われたものだ。
東京都総合防災部の公式Twitterには職員による呼びかけの様子の写真が掲載されたが、その背景に「墾田永年私財法」と白地に大きな赤い文字が写っていたのである。これは明治が「明治プロビオヨーグルトR-1」の広告として掲出したものだった。
明治は受験シーズンに合わせて、「集まれ!悩めるすべての受験生!『受験生は夜悩むPresented by 明治プロビオヨーグルトR-1』」と題したTBSのラジオ番組を放送。パーソナリティーが、受験生の悩みに答えるトークを行った。番組の公式SNSでは、受験にまつわる悩みを聞く「#全国統一受験生アンケート」も実施。この広告コピーはそのアンケート回答から生まれたもの。「受験勉強で覚えた『語感の気持ちいい言葉』」だという。
東京都総合防災部のTwitter上のコメントでは、「ダメだ、墾田永年私財法に目が行く」「後ろの看板の方が目立ちすぎ」「東京都防災のツイートで、こんなに『いいね』が付いたこと、かつてあったでしょうか!?すごい破壊力だわ」など話題になり、リツイート数は1万件以上、「いいね」は6600件以上にのぼった。
広告担当者は、「お天気カメラなどのニュース映像で抜かれ、広く目にする機会があるこの場所の広告媒体を活用したが、憲章シート広告に掲げた『墾田永年私財法』という言葉が、Twitterのトレンドワード入りする等、我々の予想を大きく上回る反響の大きさだった」と話した。
受験の”あるある”を広告に
コンセプトは心を和ませること
明治はラジオ番組とのコラボで集まった「受験生のリアルな声」を掲載するのに東京メトロ銀座線と丸ノ内線の広告貸切電車も活用した。
広告の内容は「いちばん好きな語呂合わせの言葉:いちごパンツで本能寺」「古文を勉強して思った。昔の人どうなの?:すぐ出家する」「数学で腹が立ったこと:移動する点P」「四択で迷ったら:3 は裏切らない」など受験を経験した人なら誰もが”あるある”と感じるもの。受験生の思いを乗せた電車になっていた。
クリエイティブ担当者によると「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、受験会場の密に対する心配はもちろんのこと、友人や先生とこれまでのように気軽に情報共有ができない。受験生は例年以上に不安や孤独を感じていると言われている。体調管理から受験生を応援する『明治R-1』は、そんな受験生の不安や孤独に少しでも寄り添ってあげることができないかと考え、『広告に触れる”ほんのわずかな時間”だけでも、受験生の心を和ませる』をコンセプトに企画した」という。
このように、今も昔も受験生の孤独を支える「ラジオ」で受験生の思いに耳を傾け、受験シーズンが佳境を迎え日々受験会場と自宅を往復する時の受験生に、OOHメディアで思わずほっこりする時間を提供した。受験生との接点として優れたメディアの活用方法だ。参考にしてはいかがだろうか。
※このコラムは「宣伝会議」2021年5月号からの転載です。